時雨 天

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声が聞こえる




目を瞑ると今でも思い出す。
楽しかったあの頃。放課後、一緒に帰って寄り道をした。
休日は観たかった映画を二人で観て、感動していた。
夏祭りの時は花火を静かに見て、クリスマスの時はプレゼントをお互いに交換した。
どんな時でも一緒。泣いたり、怒ったり、笑ったり。
――ふと、君の声が聞こえる。ゆっくりと目を開けて、振り返る。
しかし、誰もいない。私が一人だけ。思わず、苦笑がこぼれた。
もう君はいないのに、気がつけば思い出に浸り、探している。
どうしてあの時、握っていた手を離してしまったのか。後になって後悔する。
しっかりと握っていれば、今でも隣には君がいたはずなのに。
もう一度、君に会えたらその手を握り、絶対に離さない。
また君の声が聞こえた。幻聴が聞こえるほど、君を好きだったなんて、愛していたなんて――

9/22/2023, 2:12:16 PM