小雨

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1/7/2025, 1:13:19 PM

【追い風】

しんとしていて空の青色は薄くどこまでも広がっている。

だれもいない中でただ一人 足をみぎ、ひだりって交互に動かす。

辺りの木はすっかり枝だけになって緑なんかありやしない。
たった1枚枝に残った枯葉ももうじきビュンっと飛んでいきそうだ

あの橋までもう少しなのに

目前に来てぐだぐだと後ろをふりかえって、なんて情けないんだ


そう考えていた時、とつぜんふっと顔を上げる。

いつのまにか白く染ってしまった髪の毛が
自分の視界をばさばさと遮る

ああそうか、
私にはいつでも背中を押してくれた――があったじゃないか

さあさあ、最後に私をあそこまで連れて行っておくれ
私はもうとことん私を楽しんだんだよ。



「ありがとう」



どこかで誰かの泣く声がする。
私の目はもう開かない。

2/11/2024, 12:07:40 PM

【この場所で】
幼い頃家の前にある小さな池が大好きだった

アメンボなんかが浮いていて
雨の日はどんよりとし黒く染まってしまうけれど
朝起きると雲ひとつ無くて

何より、まだ雨が乾ききっていない中
水面に映る青い空が好きだった

からっとした夏を思わせるようで
この青い空はどこまで続くんだろうとか
なんだか私たちが住む街だけ丸く囲まれているようだなとか



大学生になり私はこの家を離れていた
新幹線で3時間かかる場所にある新しい家は
少し古くさい築50年の家で木の匂いが鼻を掠めた

幼い私が思っていたより空は広く続いていて、
どこまでも広く広く私たちを覆っていて
それでいてどこか寂しい気持ちにさせた




あれから何年経っただろうか
意見の食い違いで父と酷く言い争い、
あの家には帰らなくなってしまった

まだあの家の池にはアメンボはいるだろうか
まだ広く青い空を水面に映してくれているだろうか

あの町は、
もう私の知らない景色になってしまっているのだろうか



帰ろう、あの場所へ



3時間の新幹線で流れゆく景色は
鮮明に、だけれどどこか曖昧で
溢れ出すほどの記憶を思い出させた


ただいま、私の大好きなこの場所でまた会えてよかった

2/9/2024, 12:29:49 PM

『花束』

花束を贈ろう
君に贈ろう

目が合うだけで体温が上がってしまうような君に
そっと微笑むだけで愛おしい君に

君に 君に 君に 、君に



君に贈りたかった

君はもう別の人と笑い合っているんだろうか

僕では無い別の人と___



涙が溢れ出しても
もう君は僕の元へは戻ってこない

前を向こう

たった1輪の花を僕の心に与えよう

2/9/2024, 6:15:34 AM

『スマイル』

イツモシヅカニワラッテイル
いつでもにこにこと

ほっぺに可愛らしいえくぼを2つ作りながら
にこにこと__




静かに心のどこかが壊れていく音がした
少しずつ少しずつ
大切な何かを失うようで

そんなことにも気付けずわたしは
イツモシヅカニワラッテイル

2/7/2024, 11:41:56 AM

『どこにも書けないこと』

誰にも言えないこと
どこにも書けないこと

バレてはいけないこと
気付かれてはいけないこと

世界一優しい人間と謳われる男だって
いつもにこにこ喋りかけてくれるばあちゃんだって

そんなもの一つや二つあたりまえにあるさ

そんなもの金庫に入れて鍵をしちゃえばへっちゃらさ

何も怖くない

恐れるものはこんなちっぽけなものじゃないんだ

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