思い出には、大抵ひとが関わる。
“自分”という魂が、生き続ける限り。
誕生は、母が命をかけた証。成長は、差し伸ばされた手の数。
_____あなたがその記憶を、“思い出”と呼ぶのなら。
“思い出”をずっと、ずっと覚えていて。
またそれを思い出したとき、また織りなしたとき、
それは【想い出】となるのでしょう。
[想い出]
人生の終着点とは一体いつを指すのだろうか。
医者は答えた。
『それは心臓が止まったときだよ』
旅人は答えた。
『世界の美しさを集め終わったとき』
踊り子は答えた。
『演じることから解放されてしまった瞬間かな』
小説家は答えた。
『千の星に還るときだろう』
神は答えた。
『ない。終焉は新たな始まりさ』
人の終わりは誰かに影響を与え、心に生き続けるのだと。
______つまり終着点は体の死? 思い出? 名声からの解放?
それとも輝き? 通過点? あるいは_______
けれど結局、明確に決める必要はない。
その答えはあなたが定め、あなた自身が見つけるべきだ。
[終点]
運命とやらは存在しない。
「彼女は天女にちがいない」
花が咲くような笑顔。
露をも零すような晴れたその顔。
鈴を転がすような笑い声と、絹のように滑る黒髪。
ホワイトサボンとムスクの、爽やかながら甘い香り。
平和主義かつ博愛主義、閑雲野鶴でありながら質実剛健。
【鶴が飛ぶならば、撃ち落とせば良い】
【天女ならば、帰れぬよう羽衣を隠せば良い】
『 奪 …で 』
嵐が去った後、彼女もいなかった。
『 返 …!』
舞い降りた天女のような彼女は、
雲上の者に羽衣と翼を奪われてしまったのだ。
[花咲いて]
今日は最高の1日だった。明日はどうなるだろうか。
ああ、消えてしまいたい。明日にもならなければ。
今日という日を清算し、明日を早く迎えたい。
時よ過ぎないで。出来るなら明日はまだ来ないで。
今日も明日も、愛すべき日であるはず。
希望の夜。悲願の夜。整然たる夜。願望の夜。愛しみの夜。
さぁ、朝が来た。
ああ、朝が来てしまった。
やっと朝が来たか。
もう、朝が来ちゃった。
嗚呼、朝が来てくれた。
正気に満ちた朝。絶望の朝。照らす朝。光彩の朝。慈しむ朝。
[日の出]
絵を描くことが好きです。
その中で一番楽しいのは人物画。
その人に生命を吹き込んで、生活を見ることが好き。
この子は悩み沈む女学生。彼は機械に夢中な探究者。
その人は神さま。人を蔑む癖があるけど、とってもいい人。
いつか彼らが出会えば…小さな物語が生まれるかな。
こうやって自分の世界に人を創る度、出会わせるたび、
______わたしはヒトではなく神となるような、
彼ら彼女らが歩む人生を見ていたくなる。
______存在そのものが『もう一つの物語』へと変わるのだ。
『もう一つの物語』