運命とやらは存在しない。
「彼女は天女にちがいない」
花が咲くような笑顔。
露をも零すような晴れたその顔。
鈴を転がすような笑い声と、絹のように滑る黒髪。
ホワイトサボンとムスクの、爽やかながら甘い香り。
平和主義かつ博愛主義、閑雲野鶴でありながら質実剛健。
【鶴が飛ぶならば、撃ち落とせば良い】
【天女ならば、帰れぬよう羽衣を隠せば良い】
『 奪 …で 』
嵐が去った後、彼女もいなかった。
『 返 …!』
舞い降りた天女のような彼女は、
雲上の者に羽衣と翼を奪われてしまったのだ。
[花咲いて]
7/23/2024, 1:34:22 PM