放課後
放課後のグラウンドや体育館からは部活に励む生徒達の声が響く。どこの部にも所属してない私はさっさと帰る。…なんて事はせず、グラウンドの隅に腰掛ける。お目当てはタツヤ先輩。カッコいい~。あからさまに見つめてはバレるのでカモフラージュで視線を逸らしつつ…やっぱりガン見。
「見すぎじゃね?」
不意に頭上から声がする。仰ぎ見るとクラスメイトのアカイシ君。
「いや、何が。サッカー見てるだけだけど?」
「バレバレ~。タツヤ先輩、彼女できたけど」
「えっ!?」
取れ立てホヤホヤの新情報~♪なんてピースするアカイシ君にタオルを投げ付ける。普通にキャッチされて、そのまましれっと使われる。
「あっ、フワフワタオルなのにっ」
「確かに。優しいわ~」
「もういいっ。洗って返してよね」
「なぁなぁ」
今日はもう帰ろうと立ち上がると呼び止められる。
「明日も来る?」
「…来ない」
「えーだって毎日見に来てたじゃん。習慣変えるのよくないよー」
だって、来たって、タツヤ先輩には彼女。そういや、反対側のベンチには見掛けない、可愛らしい先輩がいる。あれ見せられるのツラ~。
「じゃぁさ、俺のこと見に来てよ」
バサリと自分のではないタオルが頭から被せられる。私のフワフワタオルには敵わないけど、これはこれで柔らかい手触り、良き。…いや、そうじゃなくて。
「…何て言った?」
「だから、俺のこと見に来てよ。俺らクラスも一瞬じゃん?教室でもグラウンドでも見放題」
おっ得~なんてまたピースするアカイシ君に舌を出して歩き出す。
アカイシ君のタオルで火照った顔を扇ぐ。
まだ残暑厳しいな~。明日もグラウンドは暑いかな…。
涙の理由
ボロボロボロ…止めどなく溢れる涙をハンカチで押さえる。
「泣かないでよ、ユミちゃーん。そりゃ、俺と別れるのはツラいだろうけど。仕方ないじゃん?運命の彼女に出会っ…」
「花粉症だよっ!」
悦に入りベラベラ的外れな事を喋るタツロウの言葉を遮る。
誰がアンタみたいな浮気男のために泣くか!秋の花粉症舐めんなっ。
ココロオドル
ココロオドル アンコール わかす Dance Dance…
「お前の歌じゃ踊れねぇよ」
「ヘタクソ」
「酷くない!?」
補習で残された放課後の教室は静かだった。補習というからには課題があり、プリントに向き合っていたところ、突如音程の外れた歌が響き、一気に緊張が解け騒がしくなる。
「分かってると思うが、プリント5枚、終わるまで帰れねぇからな」
席を外していた担任が戻り釘を刺される。
口々に返事をし、再びプリントに向き合うも。
ココロオドル アンコール わかす Dance Dance…
「っあー!ダメだ、頭ん中でリピートするわー」
「俺もー」
「どうしてくれんだよ、集中できねー」
しかもオリジナルでなく、コイツの調子っぱずれな歌が脳内再生されんのが余計腹立たしい!
束の間の休息
繁忙期でもないのに、やたらと忙しい週がある。何理由で忙しいか分からないため、いつまで続くかも目処がたたず、疲弊していく。
束の間の休息、寝ます。
力を込めて
「ちょっとした出来心じゃん」
「もう絶対しないって」
「俺にはお前だけなんだからさ」
典型的な浮気男のセリフをペラペラ発する彼氏…元彼氏の頬を力を込めて引っ叩く。