「ねぇ、空模様が綺麗だよ。」
デートの途中、愛しくてたまらない彼女が言った。
「そうだな。でも、綾と見てるから綺麗に見えるんだと思うな。」
そう言ったら彼女は嬉しそうにクスッと笑った。
「何それ。私と一緒にいるから?」
「そう。正解。
どんなところでもどんな景色でも綾となら楽しいし、綺麗に見えるんだよ。」
そう言って幸せな時間を過ごす。
綺麗な空模様を見て、
俺の心も綺麗な色と模様をした温かい色と形になっていた。
鏡
小さい頃から体が弱かった母に言われてきた。
「花、何かあったら鏡で自分を見なさい。
そうしたら自分がどうしたらいいのか、どうしたいのか自ずと見えてくるわ。自分自身を見つめるのよ。」
母はいつでも
友達と喧嘩しても
泣いている時も
楽しい時も
鏡を見て自分を見つめろと言った。
だから我が家にはいつもそれぞれの部屋に鏡が必ずある。
でもそういつも、鏡、鏡と話していた母は1年前に亡くなってしまった。
ショックだったけど、お父さんと2人で頑張ってきた。
まあ、料理とかはお互い得意じゃないから週に3回はコンビニの時もあるけど。
お母さんが知ったら笑うかな?
いや、もしかしたら天国で私達を見て怒ってるのかもしれない。
コンビニ弁当は栄養が偏る〜!
ちゃんと自炊しなさい〜!!
ってね?
お母さんがそう言う姿を思い浮かべたら少し笑えた。
チーンチーン
でもね、お母さん。
お父さんと仲良くうまくやっていけてるよ。
お母さんが亡くなったのは今でも寂しいけどお父さんとこれからも支え合って頑張るね?
でも、時々コンビニ弁当だけど許してね。
手を合わせて学校に向かった。
昼休み
私は隣のクラスの男子から呼び出された。
誰だったかな?話したことないや。
人気がない場所に移動したいと言われそこまで歩いている最中に考える。
私に何か用?
ていうか、わざわざ移動する必要ある?
目の前で歩いていたら男子がそこで止まった。
その男子は私に言う。
「あの!俺、葉山 果那っていうんだけど
ずっと前から松原さんが好きなんだ。
もし嫌じゃなければ付き合ってくれないかな?」
告白だった。
気持ちは嬉しいけど私はまだ葉山くんのことを何も知らない。名前だって今知ったばかりなんだから。
「気持ちは嬉しいけど、私まだ葉山くんのこと全然知らない。全く知らない時点で付き合うかどうかは決めれないかな。」
そう言うと目をキラキラさせて
「じゃあ、友達から友達から始めようよ!
それでもダメだったら振ってもらって構わないからさ?」
友達から、か・・・・・
それならやってみよう。
「分かった。よろしくね?葉山くん。」
そして私達は友達になった。
それから1カ月が経った。
葉山くんへの気持ちは
未だにはっきりせず、わからなかった。
葉山くんといるとドキドキするし、楽しい。
でもこの気持ちが恋なのだろうか?
分からない。
迷っていた。
迷ったまま一日が過ぎていく。
次の日
朝起きたら体がだるくて熱を測ってみたら、熱がだった。
お父さんは今日は大事なプレゼンがあるらしくどうしても会社を休めないようだった。
申し訳ないような顔でごめんな〜って嘆きながら家を出ていった。
それからは1人だ。
体暑いしきついし、寝ようかな。
布団に入って目をつぶっていると眠気が襲ってきていつのまにか寝ていた。
目が覚めたら3時だった。
何か食べたいけどきつくて何も作りたくない。
コンビニにもいけないし〜
薬は飲んだんだけどな。
ブルーな気分でどうしようかと迷っていると
ピンポーン
誰かが来たようだ。
出ないわけにはいかなくて壁をつたいながら玄関に向かい扉を開くと
葉山くんがいた。
「え、なんで?」
「お見舞いにきた!先生から熱が出たって聞いたから。
キツいのにここまで来させて、ごめんな。
上がっていいか?」
お見舞いに来てくれたんだ。
助かった。
「ありがとう。どうぞ上がって。」
お言葉に甘えて助けてもらうことにした。
そして、2人で私の部屋に向かった。
「よしっ!ゼリー持ってきたけど食べれそうか?」
すごく助かる。
「うん。お腹減ってたの。ありがとう。貰うね。」
それからゼリーを食べて、葉山くんに冷えピタとか風邪対策をしてもらった。
「本当にありがとね?だいぶ楽になったよ。」
すると、葉山くんは嬉しそうに笑った。
「良かったー、力になれて!」
少しだけ話してからあっと言う間に夕方になった。
「もうそろそろ帰るな?大丈夫か?」
葉山くんともうバイバイか。
なんだか寂しい気持ちになった。
だけど、もうすぐお父さんが帰ってくるからずっといてもらうわけにはいかない。
だから寂しさを振り切って
「うん。ありがとう。今日は本当に助かった。」
そして、葉山くんを玄関まで送った。
葉山くんは大丈夫だって、寝てろって言ってたけどさすがにきてもらって面倒を見てもらったのにお見送りしないのは申し訳ないと思ってそこは譲らなかった。
「じゃあ、また学校でな。
早く元気になって笑顔を見せてね。
花は笑ってる顔が一番可愛いし、似合うからさ。
どんな花でも好きだけどな?」
照れくさそうに笑いながら私の頭を撫でて出ていった。
私はなんだかくすぐったいような恥ずかしいようななんとも不思議な感覚に襲われ、しまいには顔に熱が集まって頬が熱かった。
ふと、玄関に置いてある大きな鏡を見た。
鏡に映っている私は信じられないぐらい、いつもとは違った。
真っ赤っかで、頬も緩んでいた。
この表情をみて私はやっと分かった。
私は葉山くんのことが好きなんだと。
そして、お母さんがずっと言っていた意味もなんとなく理解できた。
鏡を見ると自分がどうしたいのか、どうすればいいのか気持ちがわかるって。
そう言うことだったんだね。お母さん。
自分を見つめるのは大切だね。
自分自身と向き合うと変われるんだね。
ありがとう。お母さん。大事なことに気づかせてくれて。
次の日
私は葉山くんに気持ちを早く伝えたくてはやる気持ちでドキドキしながら家を出た。
頑張れ!花。
家を出るとき、後ろから
お母さんの声が聞こえた気がした。
無事、気持ちを伝えることができて私と葉山くんは
恋人
と言う名の幸せな関係になった。
完
いつまでも捨てられないもの
小説になるという夢が諦められない。捨てられない。
私には無理だって、諦めようとした時もあったけど、どうしても無理だった。
胸がモヤモヤした。
誇らしさ
「美夜〜すごいわね。テストでこんなにいい点数とるなんて〜。かっこいいね!」
お母さんが笑顔でそう言った。
私には妹がいる。
双子の妹だ。
妹は可愛いし、頭はいいし、運動神経は抜群だし、みんなに好かれる。
それに比べて私は地味だし、頭は普通で赤点ギリギリの時だってある、運動神経はすごく悪い。
なんの取り柄もない。
妹とは正反対だ。
でもだからと言って小説みたいに親から責められるわけでもないし、お母さんは「美海は美海のいいところがあるのよ。」っていつも言ってくれて全然優しい。
こんな私でも大切にしてくれる。
でも、どうしても比べる人はたくさんいてそのたびに苦しくなる。
なんで双子なんだろうって。
なんでこんなに違うんだろうって。
みんなみんな私より美夜だ。
好きな人も友達も全部全部美夜にいく。
私はこれ以上お母さんと美夜のところにいたくなくて、いれなくて、外に出る。
はぁー、私って存在しなくてもいいな。
消えたい。
少し歩いて公園のベンチに座った。
「はぁー」
ため息をついたその時だった。
「まーた。美海、ため息ついてる。
美海は美海じゃん。比べなくていいの!」
そう言って私の横に座ったのは幼なじみのこうただった。
「だって、美夜は頭もいいし、性格いいし、運動神経もいいし。それに比べて私はなんの取り柄もないんだよ?
誇れるものもないもない。
誰からも求められないし、必要ないもん。私。
もう消えても誰も悲しまないん「ふざけんなよ!」
私の声を遮ってこうたが言った。
こうたの顔を見てみると悲しんだような怒った顔をして私を見ていた。
「なぁ、消えてもいいなんていうなよ。美海。」
こうただっていつか私の前からいなくなって美夜がよくなるんだよね。きっと。
今はただ励ましてくれてるだけ。
「そうだよね。ごめんねこんなこと言っちゃって。
こうたもきっと美夜が良くなるよ。
こんなこと言って気分悪いよね。ごめんね。」
美夜ならきっとこんなこと言わないよね。
こうたは真剣な顔して言った。
「だからなんでだよ?
今までずっと幼なじみの線を越えられなくて言えなかったけど、俺は俺は!
美海が好きなんだ。
美夜でもない、美海が!
美海が俺を嫌いにならない限りは一緒にいるし、何よりお前が取り柄も誇れるものが何もないっていうなら
俺が誇れる理由になるから。
俺は美海が好きだ。
俺が美海のそばにいたい。
俺が美海にそばにいてほしい。
美海が美海自身が一番いいんだ。」
「こうた・・・・・・・」
そう思ってくれてたんだ。
本当に本当に私が好き?
私でいいの?
「ありがとう。私こうたが求めてくれるならこうたがいてくれるならもう消えたいなんて思わない。
ありがとう。」
そういうと君は眩しい笑顔で言った。
「これからもよろしく。美海。」
完
夜の海
息苦しい。
辛い。
苦しい。
日々の生活の中で限界になりそうだった。
いつも、疲れた日は夜の海にくる。
浜辺をゆっくりと歩く。
これが私には高校生になってからの唯一の楽しみだった。
「はぁー、どっか遠くに行きたい。
消えてしまいたい。」
誰か助けて
そう思った時私は意識が途切れた。
目覚めた私は海の中にいた。
やばいっ!溺れた!?早く早く助けを求めなきゃ。
でも・・・・・・・・・・・
もういいかな。
疲れたし。このまま沈んで死ねれば楽かもしれない。
いっか。
私は足掻くことをやめてそのまま海の流れに任せて目を閉じた。
けれど、いつまで経っても息苦しさがこない。
なんで、普通海に入ったら当然息は苦しくなる。
それなのに、なぜ?
異様な状況に慌てながらも周りを見てみる。
っ!?
私の体が!
テレビで見るようなにんぎょになってる。
私、にんぎょになっちゃったの?
どうしよう。これどうすればいい?
どこに行ったらいいんだろう。
「おい。どうした?」
声がした。
声の方に目を向けてみると男の人がいた。
どう言うことなのか聞けると思って近寄り、話しかける。
「あの、私なんかにんぎょになっちゃったみないなんですけど。」
そう言うと男の人は納得したように言った。
「そうか。お前もか。じゃあ、ついて来て。」
「はい。」
男の人に言われるままについていくと人がにんぎょが男の人がいた。
さっきから思ってたけど、男の人はなんでちゃんと人間の姿なの?
「よし。お前ら、新しい仲間だ。」
それは、学校で転校してくる子を先生がみんなに紹介するような感じを思い出した。
私はまだ状況が理解できていなくて、
「あの、ここはいったい?
どう言うことですか?
なんで私はこんな姿に?」
私がみんなに投げかけると私と同じようなにんぎょの姿をした女の人が言った。
「あぁ、それはね。
まいちゃんさ?海の前で考え事してなかった?
地上で苦しい思いをしてきたんじゃない?
ここはね、そういう地上で息苦しさを感じた人とか海で悲しいことを願った人達が来るんだよ。
だから私も今はもうここに馴染んだけど元々は人間で地上で過ごしてたよ?」
そうなんだ。
だから私も。
このにんぎょになったってことは簡単に信じられないけど、状況は理解できた。
するとまたさっき説明してくれた女の人が話し始めた。
「元々人間だった人には決まりがあるの。聞いてね?
あのね、私達は満月の夜には地上に戻らなくてはいけない。でも、地上に戻ってから次の日になるとまたここに来ていいってことになってる。
これは絶対ね?でも、地上に戻ってからまた来るかはあなた次第。好きなようにできる。
もしも、決まりの満月に地上に戻るって言う決まりを破ったらもう2度ここには来れなくなる。
これぐらいかな。説明することは。」
なるほどね。
ここには好きなだけいていていいのか。
それから何日か経って
そこは、海の中はすごく心地よかった。
気を遣わないでいいし、人の目も気にしなくていいし、同じ海にいる子達はいい子ばっかりだし。
もう最高だった。
ここが私の居場所だって。そう思えたんだ。
だからここにこれて良かった。
心からそう思えた。
完
こんな世界があったらいいですよね。
自分にとって心地の良い場所。
羨ましい!