あの子が今日、ここよりもずっと遠い場所に引っ越すらしい。
あの子とは昔から仲が良かった幼馴染の事だ。
僕はずっと彼女が好きだった。
せめてそばに居られれば…と思って恋心を伝えずにいようとしていた矢先のことだった。
はなればなれになるだなんてそんなの嫌だ。
胸が引き裂かれそうになった。
別れ際、最後に言葉を掛けようとしたけれど、自然と涙腺が緩んで涙が出てきてしまった。
何か、伝えなければ。
"今までありがとう"とか"またね"とか短い言葉でも良いからと口を開こうにも言葉に詰まる。
追い討ちを掛けるように嗚咽が邪魔をする。
その時、彼女が口を開いた。
"今までありがとね。また会おう!"
僕は何度も頷いて、ようやく嗚咽混じりに声を出した。
"また、会おうっ"
彼女も元気よく頷き、そのまま手を振って両親が乗っている車に向かっていった。
暫くすると車が走り出す。
僕はその車が見えなくなるまで手を大きく振って見送った。
"みゃぁ〜"
最近、子猫を飼い始めた。
なんとも愛くるしい鳴き声と動きだろう。
私の疲れた心を癒してくれる。
よちよちとおぼつかない動きでこちらに向かってくる姿も可愛らしい。
膝に乗っかってきてそのまま丸くなって眠った。
私は子猫の頭を軽く撫でながら、ただただ見つめて癒され続けた。
少し冷たい風が頬を撫ぜる。
もう秋か…
季節の移り変わりを感じながら街を歩く。
これからますます寒くなるんだろう、なんて考えながら。
"また会いましょうね"
君はそう言って、私の前から姿を消した。
何年も、何十年待てども君は帰ってこない。
私は病室のベッドに横たわり、天井を見つめる。
"ああ、もう一度…一目だけでも、また君に会いたかったなぁ"
ゆっくりと目を閉じる。
"あ…たに…いたい"
暗闇の中、微かに声が聞こえた。
"誰かいるのか?"
声のする方へ向かう。
そこには…
悲しげに微笑む君がいた。
#また会いましょう
#あなたに会いたい
俺は今か今かと落ちるのを待っている。
ゾクゾクとしたこの独特のスリルは何度味わってもやめる事ができない。
叫ぶ準備をして、安全バーに掴まる。
その頃には既に頂上へと到達していたため、今度はゆっくりと傾いていく。
一瞬静まり返った後、一気に加速して落下していく。
"ワァアアア‼︎"
落下すると同時に、俺を含めた乗客全員が一斉に叫ぶ。
その声には恐怖というよりも歓喜の色が混じっていた。
ガタンゴトンと大きな音を立てて、コースターが終着地点へと着く。
"お疲れ様でした"
そんな声と共にバーが肩から外された。
#スリル