届かぬ想い
たとえ五感がなくなっても
第六感で
また会いたいです
わがままですよ、ずっと
何も知らない私と
何でも知っているあなたの
言葉も交わさないひとときが
生き甲斐でした
思い出になった物知りなあなたには
たった一つだけ知らないことがあります
それは私が
あなたの心に傾倒して
2人でよく語り合った愛とやらを
どうやらあなたに向けていたことです
気づいていましたか?
もう遅いですね
今からでも、耳に入ることを祈っています
ではまた、来世でお会いしましょう。
神様へ
図々しい私を許してくださいますか
学び続けて空回りする姿を
鼻で笑っていただいて構いません
酒の肴にもならないような人生ですが
よければ指でも差してください
あなたの言うことは絶対ですから
私は意思を潰します
口を慎み、耳をすませて
あなたの言葉を受け取ります
丁寧に、命が削れるほど慎重に。
あなたは私を離してくれません
いつだって気にかけて
どんな時も1番に声をかけてくれます
でも、今日だけは
私の声も聞いてください
私は愚か者なので
あなたの拳だけでは心がわかりません
いっそ私を捨ててください
もっと違う未来と、もっと違う過去を抱えて
また会いに行きますから。
快晴
照らされた腕が白い
おそろしいほど、外を嫌うタチが
隠し事のできない明るさに暴かれる
昔は日焼けをしていた
赤くなるくらいに
4月だというのに真夏のようで
考え込みたくなくて早歩きをした僕は
垂れるほど汗をかいていた
もわもわとした温かい大気で
息がしにくい
犬の散歩をする人とすれ違った
胴の長い犬と目が合った
もう少し、歩いてみるか
犬の意見も借りたいよ
探しているんだ
何かを探しているんだ
しっくりくる何かを。
遠くの空へ
いつぶりかわからない休日、浮腫んだ顔で窓の外を見ると
雲ひとつない日だった
いわゆる快晴というやつだ。憂鬱である。
こんな日はいつも、あの日を思い出してしまう。
愛も情緒も、言葉も
何も知らなかったあの時のことを。
僕は当時、「水平線」が何かを知らなかった
現象なのか、モノなのか
その程度のことも解っちゃいなかった
なぜか調べる気にもならなかった
辞書も引かず、ずっと知らないままで生きていた
いつの日か、あなたと海に行った
砂を踏む感覚が新鮮で
生まれて初めて嗅いだ
潮の香りに戸惑って
あなたは慣れた様子で貝を拾っていた
そして耳を当てて、波の音がすることも教えてくれた
五感で楽しむあなたが
絵のように美しい背景に映えた
僕はその名前を知らなかった
斜に構えた僕にとっては
人に何かを聞くことは
ガキっぽくて
なにより恥ずかしくて
ずっと口に出せなかった
「写真撮ろうよ」
あなたは空を指差して、ダサい僕に声をかけた
カシャ、と少し安っぽいシャッター音がして
どこまでも続く青天井と2人が
小さな画面にまとまった
「水平線、綺麗」
飾らないあなたが素直に口にした言葉で
僕はそれが何なるかを知った
あなたは僕の手を握っていた
あの波の音を思い出す
この空が続く先で
もう一度聞きたいことがあった
もっと教えて欲しいことがあった
もっと見たいものがあった
手も届かない空へ
時も戻らない、離れ切った
あの日に酷似した空に
僕はやっぱりダサい顔でお願いした
「戻ってきてよ」
言葉にできない
綺麗な声をしている、と思った
話なんてどうでもよかった
ただこの虚像の中で
妙に繋がれてしまった気がした
何処が好みかなんて
私の方が知りたいのだ
おまけに同性か
難易度が高いよ
たまたまなのに
毎度、そんなことばかり
じめじめと考えていたら
いつのまにか意中の人は離れていく
いっそ私から立ち去ろうか
私は昔から
さようならに慣れてしまっているから