目が覚める。
どこか重い身体を起こして少し伸びをする。
開け放たれた窓から見える山は所々紅葉が始まっているのか秋色を増やしていた。
「あれ?最後に記憶にあるのはまだ春先じゃなかっただろうか?」
という事は、だいぶ長い時間寝ていた事になる。
「んんん?確か、鬼を倒して打出の小槌で打たれて……ダメだ記憶が出てこない」
秋色の増える山を見ながらしばらく悩むのでした。
(秋色)
一寸法師のオマージュ、フルスイングゴーーーーン!!から秋になっちゃった。
「我が負けたら、後のことは貴様に任そう」
そう言って戦いに出ていったあの方の意志を継いで現在まで生きてきた。
が、それももう少しで終わりそうだ。
もしも世界が終わるならあの方から継いだ意志を次の者に託そう。
「我が負けたら、後のことは貴様に任そう」
(もしも世界が終わるなら)
勇者なのか魔王なのか、次へ継がれる意志はどこまで続くだろう?
おっと、靴紐が解けた。
しゃがみこんで靴紐を結び直す。
あ、反対側も直しておくか。
両方の靴紐をしっかり縛って立ち上がる。
ぁぁぁ、立ちくらみが。
何とか持ちこたえて上着を脱いで身体を冷やす。
何やら上で俺の勝ちだ!とか参った!とかうるさいが気にせずゆっくり歩く。
(靴紐)
北風と太陽のオマージュ、どうやら上着脱いだ理由は違うようですよ?
「どうだ?今お前がこちらに寝返るならば世界の1部をお前に与えてやってもいいんだぞ?」
「くっ…魔王め、惑わしやがって!お前、どうせ騙されてるんだ!乗るなよ!!」
(えっ…めっちゃ土地欲しい…けど土地貰っても安全って訳じゃないのよね?どうせ。)
「沈黙か?ならば」
「ちょ、ちょっと待って待って!重要な決断なんだからあと5時間は考えさせて!!」
「おい!!惑わされたか!?」
「ちょっと黙ってて!!」
(答えは、まだ)
どこかの魔王と勇者パーティの様子、勇者パーティ側の誰かがめっちゃ迷ってるようで。
これからどうやって生きればいいんじゃ…
住んでいた場所はもう無く、知らぬ人と知らぬ言葉に囲まれてわしゃぁどうすればいいんじゃ…
何とか玉手箱を金に替え、釣竿を杖がわりにしてとぼとぼと感傷旅行。
(センチメンタル・ジャーニー)
浦島太郎のオマージュ、とつぜん爺さんになったらそうなるよね。