そうだなぁ、子供の頃は早く人間になりたいって思ってたな。お爺さんと二人暮しでさ、役に立てるようにって。
まぁ、色々あって鼻が伸びたりクジラに食われたりしてたら夢が叶っちゃって人間になったのは良いんだけど、ちょっとイメージと違ったからすぐ反抗期になってお爺さんと喧嘩したり、家出したり。
あぁ、今はもうそんな事はしてないよ。
もう大人になったからね。
っと、自分ばっかり喋っちゃったね。
次は君の子供の頃の夢の話を聞かせておくれよ。
(子供の頃の夢)
ピノキオのオマージュ、人間になって成長した後の話。
「え?お前、妹の結婚式は?」
「あぁ、よくよく考えたらあまり連絡も取っていなかったし、ちゃんと理由もあるんだ。そこまで聞き分けの悪い妹じゃない」
「でもよく考えろ?1度きりだぞ?」
「結婚してもどこにも行かないでそこに住んでるんだしいつでも祝えるだろ?とにかく王様が待っておられるんだ、対応しなくては」
「……お前、王様が来てる理由分かってるのか?」
結局、メロスはどこにも行かないで王様に会ってしまうのでした。
(どこにも行かないで)
走れメロスのオマージュ、メロスこれから処刑されるんだからいつでも祝えなくなるんだぞ?
君の背中を追って、追って、追って、やっと追いついて、…ゼエゼエ、、、ちょっと…待っ■■■オェ…はあはあはぁ、君早いね、うぇ■■■■。はぁ、落としたイヤリングをだね、え?お礼に踊りま?待ってまって、息上がっ、ウゥッ、息上がってこんな状態だって見えてるよね?あっあっ!!回さないでうえぇぇぇぇ■■■……
(君の背中を追って)
森のくまさんのオマージュ、くまさんお疲れ様。
片想い中の君の気持ちが知りたくて花の花弁を1枚1枚毟りながら「好き、嫌い、」と花占いをする。
隣でその様子を見ていた君が同じ様に花を取って言った。
「タンポポで花占いしようって凄いな。ところで、タンポポは舌状花って言って花弁1枚で1つの花で、その集合体がこの形なんだけど、やっぱり花占いに向いてないよ」
あー、君のそういう所が嫌い
(好き、嫌い、)
花占いはもうちょっと分かりやすい花でやりましょう。
あれは、数百年前の事じゃった。
儂は砂浜に打ち上げられた海亀を助け、その礼にと竜宮城へ行った。
そして陸へ戻ってきた時には…
そう言葉を詰まらせてお爺さんは涙を流した。
先程まで曇っていた空模様はお爺さんの涙に呼応するように雨の香りをさせ始めた。
お爺さんが手拭いで顔を拭く。涙の跡はもうそこにはない。
お爺さんは大事そうに玉手箱を手に取り、こう言った。
困った者を助けるにも相応の覚悟がいる事を忘れてはいけないよ。
雨は止みそうにない。
(雨の香り、涙の跡)
浦島太郎のオマージュ、お爺さんになった後のお話。