ぽんこっぅ

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あれは、数百年前の事じゃった。
儂は砂浜に打ち上げられた海亀を助け、その礼にと竜宮城へ行った。
そして陸へ戻ってきた時には…

そう言葉を詰まらせてお爺さんは涙を流した。
先程まで曇っていた空模様はお爺さんの涙に呼応するように雨の香りをさせ始めた。
お爺さんが手拭いで顔を拭く。涙の跡はもうそこにはない。
お爺さんは大事そうに玉手箱を手に取り、こう言った。

困った者を助けるにも相応の覚悟がいる事を忘れてはいけないよ。

雨は止みそうにない。
(雨の香り、涙の跡)

浦島太郎のオマージュ、お爺さんになった後のお話。

6/19/2025, 12:15:01 PM