ちょうど仕事帰りで良かったとアセチレンガスのボンベと高濃度酸素のボンベを下ろす。
ワニバサミ型の罠は鋳造鉄だろうからすぐに溶断出来るだろう。
溶接機にホースを繋ぎ、ガスと酸素を混合させて火をつける。
慎重に、足を焼かないように、素早く鉄を溶断した。
ロック機構部分を切ったのですぐに罠は意味をなさなくなり口を開ける。
罠に捕まっていた鶴は逃げようとして、高濃度酸素のボンベを倒しながら勢い良く羽ばたいて行った。
まずい。シュウシュウと高濃度酸素が漏れる音がしている。
ボンッ!!!!!!!!!!!
(酸素)
鶴の恩返しのオマージュ、高濃度酸素ボンベは転倒・衝撃に弱く吹き飛ぶと危険です。
いくつかのファイルを持って閲覧席へ向かう。
大事な大事なファイルを汚さない様に綿の手袋をはめて、マスクを着用して1ページずつめくっていく。
このファイルは記憶だ。
広大な記憶の海から当てはまりそうな記憶をピックアップしてそれらを閲覧し最適な記憶を見つけるのが自分の仕事。
そしてこの記憶の海は数秒毎に変化し続ける。
さっきまであった記憶がどこに紛れ込んだのか分からなくなることもある。
今回の記憶はそこまで移動することの無い記憶だからすぐ見つかったけど。
うん、これが最適な記憶だ。
該当ファイルを次の作業員に渡して残ったファイルをまた記憶の海へ戻していく。
そうしたらまた次のファイルを探しに行く。
(記憶の海)
脳内で働く海馬さんのお仕事の様子。(はたらく〇胞読んだせいだなこりゃ)
私には無数の目がある。
腕にも腹にも背中にも足にも。
東西南北天地六方を常に見ている。
が、目が無数にある事はそんなにいい事ばかりではない。
出会う人にはまず気味悪がられ避けられ罵られる。
恋した相手にも同じだ。
けれども、本当はただ君だけを、君の姿だけをこの目で見ていたい。
(ただ君だけ)
妖怪・百目鬼の恋物語っぽいお話。
助けた亀に渡されたチケットの文字は不可解な文字で解読出来なかった。
数字は読めたので、おそらく日にちだろうと思い、その日にちになるまで待った。
遂にその日にちだろうと思う日に海辺へやってきた。
そこには1隻の船が停留しており、チケットを見せるとそのまま船に乗せられた。
船には亀が待っていた。
コレは未来への船だと亀が言った。
これから数百年、数千年先へ向かうのだという。
(未来への船)
浦島太郎のオマージュ、竜宮城ではなく船に乗せられたバージョン。
山林地帯に狸が出たと知らせを受けた猟師が数名、山の裾野に広がる森に到着するのに半刻も経っていなかった。
猟師達は各々に散弾銃やライフルを携えて猟犬を放ち狸を探し出した。
狸を見つけるのは簡単だった。
猟犬達は強い匂いが残っているルートを即座に見つけ出し、猟師達を誘った。
しばらくの後、数種類の銃声が何度か響き渡り、残響を重ねて静かなる森へと戻っていった。
(静かなる森へ)
あんたがたどこさのオマージュ、狸に対して猟師本気過ぎる件。