いつだったか飲み込んだ船は砂糖を運んでいた様でとても甘かった記憶がある。
どの海域だったかは覚えているが、その海域のどの辺りだったかまでは思い出せない。
他にもいろいろ運ぶ物によって味が違う船をいくつも飲み込んでいるから記憶がごっちゃなのだ。
また砂糖運びの船に逢えないかな?と甘い思い出を繰り返しつつ通りかかった舟を飲み込んだ。
お爺さんが1人乗った小型の舟だが腹の足しにはなるだろう。
あぁ、甘い甘い船は何処だろう?
(sweet Memories)
ピノキオの鯨モンストロの甘い思い出、甘党鯨って居るのだろうか?
後ろから嫌な気配が一気に迫って来る。
バックミラーに写ったそれは人型のように見える。
待てよ、今この車は70kmで走っているんだぞ?
明らかにこの世の者では無い事は確かだ。
「ターボババア」とか「マッハジジイ」と呼ばれる怪異の事は聞いた事がある。抜かれたら呪われると言われているあれだ。
抜かされなければ良いのだろ?と勢いよくアクセルを踏み込む。
後ろの人型が挑発に乗って更に近付いてきた。
もう少しで車に触れる距離になった瞬間、急ブレーキを踏む。
止まることに間に合わなかったであろう人型は車の後部にめり込むようにぶつかって来た。
急激な減速をした事で後ろから風と排気ガスの匂いが前方に流れた。
人型の怪異は諦めたのかその風と共に消え去って行った。
助かった。
(風と)
ターボババアの怪異のオマージュ、ぶつかられた後部が修理不能な程度に損壊している事に早く気付いて。
昨日の夜、笠のお礼と唄が聞こえ、朝起きると食べ物や宝物が家の前に山のように積まれていた。
そこに残された車輪の軌跡を辿って辿り着いた先は笠を被った地蔵のもとだった。
やっぱり、お地蔵様達だったんだなと納得して急いで家に戻る。
新しく笠を編み、お地蔵様のもとへ戻り、サイズを合わせた笠に差し替える。もちろん足りなかった手ぬぐいのお地蔵様も笠に変える。
(軌跡)
笠地蔵のオマージュ、お地蔵様達お礼に来たこと荷車の車輪軌跡でモロバレです。
「確かに貴方に過去に私も助けられたわ。助けられた事は感謝しているのよ。行動力がある事も、剣の腕も、地位についても尊敬してる」
「なら…」
「でもね、意識の無い見知らぬ女性になんの躊躇いもなくキスしているのよ?警戒心が生まれることは必然じゃない」
「……」
好きになれない、嫌いになれない、あやふやな気持ちが心に揺れてそれ以上の進展はおそらくないだろうと相手を見据える。
白雪姫と呼ばれる女性を助けてきた夫である王子に背を向けて部屋へと戻る。
(好きになれない、嫌いになれない)
白雪姫のオマージュ、王子が既婚者だった場合。
煙突から忍び込んでお湯に落ちたオオカミ、すぐに蓋を閉められ鍋から出ることができない事をいい事に、3匹の子豚達はオオカミを煽る事にした。
「オオカミさんオオカミさん、夜が明けるまで生きていられたら逃がしてあげる」
「オオカミさんオオカミさん、蓋を開けたら反則だよ」
「オオカミさんオオカミさん、もっともっと薪をくべるけど頑張ってね」
吹き飛ばされた藁の家も木の家もかまどに突っ込んで火力をあげよう。
もっともっと薪を持ってこなくちゃ。
そして遂に夜が明けた。
レンガの家はとても静かでかまどの火は消えて、誰も動いていない。
蓋の閉じた鍋もそのままだ。
(夜が明けた。)
3匹の子豚のオマージュ、オオカミは熱傷のち溺〇、子豚達は火を強く燃やした事による一酸化炭素中毒を起こしたものとみられる。