「確かに貴方に過去に私も助けられたわ。助けられた事は感謝しているのよ。行動力がある事も、剣の腕も、地位についても尊敬してる」
「なら…」
「でもね、意識の無い見知らぬ女性になんの躊躇いもなくキスしているのよ?警戒心が生まれることは必然じゃない」
「……」
好きになれない、嫌いになれない、あやふやな気持ちが心に揺れてそれ以上の進展はおそらくないだろうと相手を見据える。
白雪姫と呼ばれる女性を助けてきた夫である王子に背を向けて部屋へと戻る。
(好きになれない、嫌いになれない)
白雪姫のオマージュ、王子が既婚者だった場合。
煙突から忍び込んでお湯に落ちたオオカミ、すぐに蓋を閉められ鍋から出ることができない事をいい事に、3匹の子豚達はオオカミを煽る事にした。
「オオカミさんオオカミさん、夜が明けるまで生きていられたら逃がしてあげる」
「オオカミさんオオカミさん、蓋を開けたら反則だよ」
「オオカミさんオオカミさん、もっともっと薪をくべるけど頑張ってね」
吹き飛ばされた藁の家も木の家もかまどに突っ込んで火力をあげよう。
もっともっと薪を持ってこなくちゃ。
そして遂に夜が明けた。
レンガの家はとても静かでかまどの火は消えて、誰も動いていない。
蓋の閉じた鍋もそのままだ。
(夜が明けた。)
3匹の子豚のオマージュ、オオカミは熱傷のち溺〇、子豚達は火を強く燃やした事による一酸化炭素中毒を起こしたものとみられる。
今日も今日とて釣りして食べる分だけ数匹釣って、流れ着いた海藻拾って、大事に育てた畑の野菜を収穫して家路に着く。
今日も夕陽が綺麗に沈むなと水平線を眺めていた視界にふとした瞬間、一瞬のチラつきがあった。
自分の後ろから「動くな振り向くな。既に終えている」と声がした。
「どういう…?」
訳が分からないので、そう言いつつ振り向いて相手を探そうとする。
視界が逆転していく。手に持った魚や野菜が腕と一緒に地面に落ちていく。
最後に見えたのはキジの尾羽根だった。
(ふとした瞬間)
桃太郎のオマージュ、切られたことに気付かせない桃太郎の剣の腕。
彦星は織姫に会うために天の川を目指し急いでいる。
彦星の住まう星アルタイルから、織姫の住まう星ベガまでは14.4光年ほど離れている。
光年とは、光が1年かけて進む距離を用いた単位だ。
つまり、光速で14年以上かかるという計算である。
「1年1回、天の川で会いましょう」という事はつまり不可能な距離なのだ。
だが、彦星は諦めていない。どんなに離れていても必ず会いに行くと誓ったのだ。
どんなに離れていても急ぐしかないのだ。
(どんなに離れていても)
彦星と織姫のオマージュ、「織姫と彦星が 人間と同じような寿命だったら3.2秒に1回、 0.0086秒だけ会える」ので距離はあれど、割と会いまくっているようです。
春は出会いの季節だ。
あっちに恋、こっちに恋、愛にきて、愛をとばして。
見慣れないカモ達に混じって飛んできた1羽の白鳥。
自分がカモだと思っているようで、周りのメスに求愛をするが尽くハズレに終わる。
番になったカモ達はあちらこちらで巣を探しに飛んでいく。
最後の1羽になった白鳥は、また他の湖へ恋を愛を探しに飛び立つのでした。
(「こっちに恋」「愛にきて」)
みにくいアヒルの子のオマージュ、大きくなった後のお話。