遠くから呼ぶ声がする。
答えてはいけない。
連れて行かれるから。
遠くの声がだんだん近くに聞こえてくる気がする。
振り向いてはいけない。
襲われるから。
遠くから始まった声はすぐ真後ろで呼ぶ。
聞こえている事を感づかれてはいけない。
もう逃げられないから。
(遠くの声)
ホラー系でよくある展開、後ろに居るのはナニ?
春は恋の季節。
…だと思う。
目の前の方に一目惚れをした。
今すぐこの気持ちを伝えないと!
春恋は成就するだろうか?
春はあけぼのと言うくらいだから、徐々に明るくなる恋になるだろうか?
目の前に残骸が転がっている。
春恋は叶わなかった。
一目惚れした方の残骸はトンカツにでもして食ってしまおう。
春はあげものと言うし。
(春恋)
おそらくオオカミ、ブタに恋して散って散らして証拠隠滅トンカツもぐもぐのようです。
家の居候が何やら大きな紙を広げ何か書き込んでいる。
「来年再来年くらいに子供10羽くらいすぽぽんと産んで、食糧は地蔵さん所に頼んで、家は…が島の奴らに建ててもらおうかな?でもなぁ、竜宮のも良いんだよなぁ」
本当に何を言ってるのか分からない状態で見ているとこちらに気付いた居候、
「どうしたのじゃ?そんなに見つめて、朝から…」
「違う違う違う!!!!」
「そんなに否定せんでもええじゃろ」
「いや、否定するっ。というかなんだその紙は」
「未来図じゃよ。こう、これからの人生計画をじゃな」
「それにしては子供10人とか家がって聞こえたが?」
「暮らしていくに必要じゃろ?それから10人じゃなくて10羽じゃぞ」
「いや、居候なんだから出てってくんね」
まさか、助けた鶴がこんなだとは思わなかった。
俺の未来図、あの鶴を助けた時に崩れていたんだな。
(未来図)
鶴の恩返しのオマージュ、すっかり居着いた居候鶴なのでした。
今年も一輪だけ桜花を咲かせた枯れ木はほのかに風に揺らいでいる。
なぜあの枯れ木に花が咲くのか、なぜあの枯れ木は数百年前から朽ちないのか、なぜあの枯れ木がそこに植わっているのか…何も知る人は居ない。ただ誰もそれに触れようともしない。
一輪の桜花は数日でひとひら、ひとひら散っていく。
その後は葉も付けずそのまま静かにそこに在り続ける。
(ひとひら)
花咲かじいさんのオマージュ、数百年後も枯れ木は未だ桜花を咲かしているようです。
この殺風景な場所に御殿を建てろと?
ふむ、地盤は硬めだな。
なるべく重く耐水性と耐腐食性の強い建材が必要になるな。
設計図通りに行かない箇所が出てくるだろうが、潮の流れと潮の満ち干きになるべく対応する様にその場で変えるしか無いだろう。
そうして工事が始まり、数年の歳月を経て、元々岩と砂の殺風景な海の底に立派な御殿が出来上がった。
(風景)
浦島太郎のオマージュ、竜宮城着工から完成までの様子。