家の居候が何やら大きな紙を広げ何か書き込んでいる。
「来年再来年くらいに子供10羽くらいすぽぽんと産んで、食糧は地蔵さん所に頼んで、家は…が島の奴らに建ててもらおうかな?でもなぁ、竜宮のも良いんだよなぁ」
本当に何を言ってるのか分からない状態で見ているとこちらに気付いた居候、
「どうしたのじゃ?そんなに見つめて、朝から…」
「違う違う違う!!!!」
「そんなに否定せんでもええじゃろ」
「いや、否定するっ。というかなんだその紙は」
「未来図じゃよ。こう、これからの人生計画をじゃな」
「それにしては子供10人とか家がって聞こえたが?」
「暮らしていくに必要じゃろ?それから10人じゃなくて10羽じゃぞ」
「いや、居候なんだから出てってくんね」
まさか、助けた鶴がこんなだとは思わなかった。
俺の未来図、あの鶴を助けた時に崩れていたんだな。
(未来図)
鶴の恩返しのオマージュ、すっかり居着いた居候鶴なのでした。
今年も一輪だけ桜花を咲かせた枯れ木はほのかに風に揺らいでいる。
なぜあの枯れ木に花が咲くのか、なぜあの枯れ木は数百年前から朽ちないのか、なぜあの枯れ木がそこに植わっているのか…何も知る人は居ない。ただ誰もそれに触れようともしない。
一輪の桜花は数日でひとひら、ひとひら散っていく。
その後は葉も付けずそのまま静かにそこに在り続ける。
(ひとひら)
花咲かじいさんのオマージュ、数百年後も枯れ木は未だ桜花を咲かしているようです。
この殺風景な場所に御殿を建てろと?
ふむ、地盤は硬めだな。
なるべく重く耐水性と耐腐食性の強い建材が必要になるな。
設計図通りに行かない箇所が出てくるだろうが、潮の流れと潮の満ち干きになるべく対応する様にその場で変えるしか無いだろう。
そうして工事が始まり、数年の歳月を経て、元々岩と砂の殺風景な海の底に立派な御殿が出来上がった。
(風景)
浦島太郎のオマージュ、竜宮城着工から完成までの様子。
黒い狸の君は白い兎の僕を油断した目で見ていたけれど、腹黒さは君以上なんだよ。
君が知らずに背負った背負子はよく燃えるように松を多くしたし、火傷をおった君に届けた塗り薬はしみるだけでなんの効果もないし、君が知らずに乗った舟はすぐに沈むように細工した。
君と僕、僕と君、どっちが上手だろうね?
考えるまでもないかな?
だってもう結果は決まっているからね。
(君と僕)
カチカチ山のオマージュ、腹黒すぎる白兎のようです。
『ワタシ、メリーサン、イマ、アナタノ、ノウニ、チョクセツ、カタリカケテルノ』
そんな言葉がいきなり脳に響いた。
驚いて幻聴かどうか辺りを見回す。
『ワタシ、メリーサン、アナタノ、ユメヘ、トウジョウスルノ』
やっぱり脳に直接響いている感じだ。
夢へ?
『ワタシ、メリーサン、アナタノ、ユメヲ、アクムニ、カエルノ』
悪夢に…なら、やる事は1つしかないな。今日は完徹してやる。
『ワタシ、メリーサン、ユメへ、アクセスデキナイノ』
寝なけりゃいいんだ。寝なけりゃ。寝なけ………Zzz...
『ワタシ、メリーサン、ヤットネタノ、ユメへ、ハイルノ』
(夢へ!)
怪異メリーさんの新しいバージョンっぽい話。