最初の獲物は、子ブタ共だった。
次の獲物は、森にひとりで住むババアとそこを訪ねてくる幼女だった。
更に次の獲物は、留守番中の子羊共だった。
更に次は…その次は…
目が覚める。辺りは静かでまだ日は上っていないようだ。
「久しぶりに嫌な夢を見たな」
そうつぶやきながら凝り固まった体を伸ばす。
獲物を襲い成功したと思ったら、だいたい酷い目にあい命を落とす。
そしてその記憶を継いだまま別の所で生き返る。
幾度も繰り返している。
今日のようにその記憶が夢に出るとその日から1週間以内に同じように獲物を襲ったあと命を落とす。
また記憶が増えるな、と思いながら今日を生きる為に獲物を探しに行動を始める。
(記憶)
物語のオオカミの記憶、死んでは生き返ってを繰り返すオオカミの話。
「もう二度としないって言ったよね?」
そう相手を縄で縛り上げ首元にナイフを沿わす。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と、相手は命乞いを始めるが、もう二度としないと言った約束を破ったのだから…
「そのへんにしといてやりなさい」
と、後ろから声がかかりナイフを取り上げられる。
おばあちゃんがそこには立っていて、取り上げたナイフをケースに戻している。
「オオカミだって生きるのに必死なのさ」
そう言いながら縄を解く。
「でもね、もう二度としないと言った約束を破った道理は通してもらうよ」
おばあちゃんはそう言いながらオオカミの口に輪をはめた。
オオカミの口はもう二度と開かない。
赤い頭巾を破った一族に近づいたオオカミ達はいつもこうして躾られるのでした。
(もう二度と)
赤ずきんちゃんのオマージュ、おばあちゃん強かったバージョン
ふふふ、これは勝ったぞ。
地上には太陽の光が届かないくらいに雲った空。
風も吹き放題、雨も降らし放題。
どれだけ太陽が頑張っても旅人へは届かない。
旅人は暴風雨から逃げて小屋に逃げ込んだようだ。
小屋の中で濡れた服を脱いでいるのが窓から見える。
服を脱がした方が勝ちというルール上、そこまでの過程はどうでもいいのだ。
北風は勝ち誇って更に曇りの空を暗くするのだった。
(雲り)
北風と太陽のオマージュ、北風が勝っちゃったバージョン
「俺は陸に、元の所に戻るぞ」
そう言って立ち上がるが、隣に座った女性は焦る様子もなく目の前で繰り広げられている踊りを見ている。
「お帰りになると言っても貴方様はこの環境に適していないのですよ。部屋を出たが最期、水圧に潰され呼吸も出来ずbyebye…バイバイ。それでもよろしければどうぞお帰りになって」
こちらを見ることも無くそう告げた女性は、ゆっくりと盃を手に取り酒なんぞを嗜んでいる。
そうだ、こちらが圧倒的に不利なのだ。
帰ろうに帰れない海の牢獄、出ることの出来ない部屋。
陸にbyebyeしてここで一生を全うするか、ここをbyebyeして人生からもbyebyeするか…どちらにせよ、精神を病んで自己からbyebye…しそうだ。
(byebye…)
浦島太郎のオマージュ、昨日の投稿でまんまと竜宮城へ連れられて来たのがこうなりました。
ぽこ…ぽこ…と呼吸の度に気泡が上へ上へと上っていく。肺に空気は残っていないはずだけどどこから出る気泡なのだろう?
ウミガメの甲羅の縁をしっかり握ってどんどん進んでいく。
熱帯の海らしく、色鮮やかな魚や珊瑚、毒を持ついかつい魚と今にも襲ってきそうなサメの群れ。
ウミガメが言うには、「ワタシの甲羅に乗っている分には安全ですから海の景色を堪能してください」だそうだ。
ウミガメの見る景色を自分も同じように見る。
(君と見た景色)
浦島太郎のオマージュ、竜宮城までの道のりのようす。