何か嫌な予感がする。
むしのしらせというのか、今何かが起きているに違いない。
心がざわめく。
買い物を切り上げて急いで家に戻る。
家のドアが開いている。
心のざわめきが大きくなり周囲の音が聞こえない。
白い粉が床に飛んでいる。
そして残された足跡は犬系の足だ。
おそらくオオカミだろう。
子羊達はどこ?
ざわめきどころじゃない。
(心のざわめき)
7匹の子ヤギのオマージュ、買い物に出た母ヤギ目線。
ボチャン!!と頭上で水になにか落ちた音がした。
ゴポゴポと空気を巻き込みながらそれが落ちてくる。
なんだ?斧か?
鉄で出来た質実剛健の飾りのない斧そのものだ。
ただ、普通に返すのも面白くない。
そういえば、ただの遊びで作った金の斧と銀の斧がどこかにしまってあるはずだ。
入っていそうな箱をいくつか開けるが見つからない。
金の斧君銀の斧君どこだい?とちょっと大きい箱を開けてひっくり返す。あったあった。
金の斧銀の斧を両手に持って湖から浮き上がる。
「うわあぁぁぁぁぁ」
と叫び声が遠ざかる。
湖から出た時に顔についた水で目が開けられないせいで姿が見えない。
かっこ悪いが袖で顔を拭い目を開ける。
誰も居ない。
鉄の斧を落としたであろう君は何処に?
……まぁいいか。
また湖に沈んでいく。
ひっくり返した箱の片付けしなきゃいけない。
(君を探して)
金の斧銀の斧のオマージュ、湖の女神様も大変な様子ですが斧は返してあげて。
そろそろ新しい服が欲しいなと呟いたらすぐに家臣達が仕立て屋を数人連れてきた。
家臣達に、自分が連れてきた仕立て屋が1番だ1番だと言っているが、当の仕立て屋達は御前である手前頭を下げて緊張しているようだ。
「我が欲するは、軽く涼しい服だ」
そう宣告し仕立て屋達に作業を始めさせる。
1人は、極東に伝わる衣装である浴衣なる物を作った。
確かに軽く涼しいが王に相応しい豪勢さは無い。
1人は、頭の良い人には見えない服だと言ってきた。
確かに見えないがデザイン等が不明だ。
1人は、シルクを多用した服を待ってきた。
どう見ても女性物のデザインだ。
最後の1人は、透明な服の一部だと言って1枚の布を出してきた。
この布は知っている。戦士達がフンドシと呼んでいる物だ。
「うむ」
と一言言って立ち上がり宣告する。
「全員不敬罪で打首」
結局軽く涼しい服は手に入らなかった。
(透明)
裸の王様のオマージュ、王様が気に入る軽く涼しい服は見つかるのだろうか?しまむら辺りに売ってない?
コレが最後の1本。
マッチを擦る。
暖かな火の中に賑やかな風景が見える。
あぁ、この後美味しい料理を食べた記憶の風景だなと思い出す。
マッチの軸が燃え火は次第に小さくなっていく。
待って、まだ料理でてきてない!
けれど、火は静かに消えてしまった。
終わりだ。
…
……
………
とでも言うと思ったか!?
まだまだ売れ残りマッチの新しい箱が幾つもあるんだ!!
またマッチを擦る。
1本1本の燃える感覚が短い。
思い出が、火が終わり、また初まる、繰り返す。
マッチが尽きる前にこの楽しい思い出は終わるのだろうか?
(終わり、また初まる、)
マッチ売りの少女のオマージュ、擦り放題思い出見放題バージョン。
数々の星を巡って、ようやく自分の星へ帰ってきた。
が、超高高速度軌道での航行を繰り返していたせいか、自分の時間と周囲の時間がズレてしまっていた。
自分の星へ降り立つがそこは荒廃した岩と砂の大地しか無くあれだけ賑わっていた都はその痕跡すらない。
いや、正確には、おそらく御殿があった高台は残っているが。
この星の隣にあり続けている青と緑と茶色が混ざった星は変わらない。
確か…地球と言っただろうか。
あの星も降り立ったら変わってしまっているのだろうか?行ってみよう。
(星)
かぐや姫のオマージュ、SF仕立てにしてみました。