『我を目覚めさせし者、願いを3つ叶えて進ぜよう』
中古で買ったアンティークのランプからそんなことを言いつつ変な奴が出てきた。
あまり出回らない形なので、ただの勢いで買っただけなのだが。
『どうした?ほら、願いを言ってみよ』
「うーん、願いが1つ叶うならば、ちゃんとランプとして使えるようにならん?」
『我の住処に火を点けたいと?そもそも3つ叶えると言っている。1つじゃない』
「じゃぁ、どれだけ使用してもオイルが減らず、風が吹いても雨が降っても火が消えず、変な奴が出ないランプを頂戴」
『変な…我の事か?酷くないか?』
「酷くないし、願いは言ったんだから早く」
ハッと意識が戻る。手にはさっきと変わらないランプがある。
早く帰って火を点けてみよう。
(願いが1つ叶うならば)
アラジンと魔法のランプのオマージュ、中古だし願いはランプ使わせろだしなバージョン。
嗚呼無常無情。
こんな小さな舌を切って最終的に得たのはモノノ怪どもから逃げ惑う残りわずかな生き地獄。
あんな子雀に嫉妬しなけりゃ良かった。
欲を出して雀の屋敷に行かなきゃ良かった。
夫の言うことをもう少しでも聞いときゃ良かった。
嗚呼、嗚呼、モノノ怪どもの足跡がまた迫ってくる。
囲まれて訳の分からん呻き声を聞かされる前に逃げなくては。
嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼…
(嗚呼)
舌切り雀のオマージュ、欲張り婆さんの最期。
背を低くして洞窟乗った小さい入り口を気をつけて潜る。
10m程このまま進めば同志が集まる秘密の場所へ出る。
「遅かったじゃないか。これで全員揃ったな」
「では、情報交換会を始める」
そう同志が初めの言葉を言うと、順に情報が公開され共有されていく。
自分の番はもう少し後だが公開された情報をメモに取っていく。
おっと、狙っていた3匹の豚は襲撃に成功したと情報が上がった。次の獲物にシフトしなくては。
そろそろ自分が情報を公開する番だ。
「新たに産まれた子ヤギは7頭、父ヤギは不在で日中に母ヤギが出掛ける時間があるもよう。襲うなら集団で行った方が良いだろう」
そう自分が調べた情報を話す。
この秘密の場所で交換しあった情報を元に獲物を襲いに行く。
全員が情報を公開し終えたらまた狭い通路を気をつけて潜る。そして散り散りに去っていく。
次の獲物をどうするか考えに巣に戻ろう。
(秘密の場所)
オオカミ達が獲物の情報を公開しあっているもよう、こうして色々な物語でオオカミが出るのか。
あるぅ日〜森の中〜くまさんに〜でぁあった〜♪
頭の中にそんな歌がラララ〜と流れている。
目の前には熊が唸っている。
更にその時横の藪からオオカミが出てきた。
「ちょっと待てーい!!おい!熊野郎、ソイツは俺の物語の主人公だろ!?襲うんじゃねぇよ!!」
「いや、コイツは俺のところでピアス落とすやつだ!!」
そんな言い争いが始まり、その当事者である自分はほったらかしにされている。
「私、赤い頭巾もピアスもしてないのに…」
そっとその場を離れ、お菓子の家の横を通り過ぎ自分の家へ帰る。
頭の中は色んなBGMがラララ〜♪と流れ続けている。
(ラララ)
色々世界が混ざりあったもよう、頭の中でBGMが流れている民は挙手。
カニにおにぎりを預け、サルは木に登った。
柿の実をいくつかもぎ取り食べてみる。
うん、しっかり熟していてちょうどいい甘さだ。
下で待つカニが呼ぶ声がする。
早く柿の実をくれと急かしてくる。
柿の実を持ったまま降りるのは危ないなとカニに声を掛けてから投げて落とす。
が、柿の実は地上に落ちず、急激な突風により飛んで行った。
カニもサルも風に飛ばされる。
風が運ぶ柿の実カニサルはどうする事も出来ずただ風に遊ばれるだけだったとさ。
(風が運ぶもの)
サルカニ合戦のオマージュ、喧嘩勃発する前に風によって続かないようす。