面と向かっては言えないが、あまりきびだんごは好きじゃないんだ。
ただ、あまりにも腹が減っていたのと、群れからはぐれたて寂しかったからつい、きびだんごをねだってしまったんだ。
食べた後に、食ったからにはお供になって鬼ヶ島へ行くのだと言われた時は焦ったさ。
好きでもないきびだんごを食べて、後出しでより厳しい事を告げられ、後ろにいる犬が諦めろって顔で見てくるから、仕方なく着いていくだけだ。
後から来たキジも同じ目にあっていた。
諦めろって顔で見るしかできなかったな。
とりあえず、きびだんごはもういらないや。
(ひそかな想い)
桃太郎のオマージュ猿目線、きびだんごだけで命を捧げろって桃太郎って案外鬼畜だなって。
罠にかかったヤツを逃がした日の夜、それは訪れた。
「どうもツルです。」
「いや、どう見てもサギだろお前」
「間違えました。ペリカンの恩返しです。」
「だからサギだろ」
「機織り機を貸して頂ければクジャクの羽で一反織りましょう。」
「クジャクじゃないじゃんお前」
「とりあえず中に入れてもらえませんか?ハシビロコウのように突っ立ってるのは苦手で。」
「いや、サギって立って獲物待ちする習性じゃん」
話をしている内にもう何が何だかわけが分からなくなってきました。
(あなたは誰)
ツルの恩返しのオマージュ、言う事バラバラな詐欺師なサギだったようです。
確かに受け取ったよ。
内容は読んだんだ。
『次の休みに遊びに行くよ』
って書いてあったのは覚えているんだ。
でも、瞬きした次の瞬間には手に持っていたはずの手紙が無くなっていたんだ。
でも、返事の手紙は書いてポストに入れはしたよ。
返事の手紙だと思うけど、届いて手に取った瞬間に消えていたんだ。手には手紙を持った感触が残ってるのに無いんだ。
だからなんて書いてあるのかは知らないんだ。
(手紙の行方)
童謡「やぎさんゆうびん」のオマージュ、そりゃあ行方は1つしかないよね。
旅人はいきなり強く吹いた風に対応が遅れ帽子を飛ばされてしまった。
頭が寒い。
しばらく吹き続けた風が弱くなってくると雲が流され日が照ってくる。
旅人は帽子がどこかにないか探して見当たらない様子で参ったなと肩を落とす。
帽子がないと頭を防げない。
頭皮が剥き出しのその頭は照りつける日に輝き、じりじりと熱くなっていく。
旅人はたまらずタオルを帽子の代わりに被るのだった。
(輝き)
北風と太陽のオマージュ、旅人はスキンヘッドだったようでテッカテカです。
待ってくれ!!それを齧ってはいけない!!
手にしたリンゴを口に運ぶ姿が見えるが、声は届かず、今から走っても遅いだろう。
頼む、時間よ止まってくれ!!ほんの少しでいいんだ。
できる限りの全力で走るが無情にもリンゴは齧られ、その人は倒れてしまった。
遅かった。…時間は止まらなかった。
せめてその姿を保てるように時間よ止まってくれ。
(時間よ止まれ)
白雪姫のオマージュ、近くに居た王子様間に合わず。