どこからともなく「助けて助けて」と声が聞こえる。
辺りを見回すが助けを求めているような人物は見当たらない。
「上だよ上」といっそう大きな声が聞こえ、上を見上げる。
木の枝にぶら下がるようにしがみついた猫が居た。
長靴が片方脱げかけているのを見るに、だいぶ焦っているようだ。
手を伸ばして猫を捕獲し地上に下ろす。
「いやぁ助かった。君の声がしたから木から降りようとして滑ったんだ」
そう言いながら長靴を履き直す猫。
何事もなくて良かったよと2人で歩き出す。
(君の声がする)
長靴を履いた猫のオマージュ、木から降りれなくなるのは猫共通点なようで。
「本日バレンタインでーす!購入特典でチョコレート付いてきまーす!」
そう声を上げると続々とお客様が集まってきた。
飛ぶようにマッチが売れチョコレートも減っていく。
「ありがとう!ありがとうございます!!」
今日の売り上げは最高額に達するかもしれない。
「特典チョコレート残り8つでーす!早い者勝ちでーす!!」
チョコレートの在庫が終わった途端お客様はちりじりに去っていった。
「お買い上げありがとうございました」
そう言って今日は店じまいだ。
(ありがとう)
マッチ売りの少女のオマージュ、チョコレート効果で売れたようす。
『どうも、先日正体バレて逃げた鶴です。』
そんな文章から始まる手紙が一通届いた。
続きはこう書いてある。
『助けていただいた時からなのですが、その後訪ねて行った時もそうだったので伝えておこうと思いまして手紙を書いております。』
ふむふむ、何か大事な事だろうか?
『その、、、ズボンのチャックが半分ほど開きっぱなしになっておりまして、今一度ご確認をと伝えておきます。』
チャック、、、あ!!開いてる。
わざわざ手紙を寄越す位なのだから本当にずっと開きっぱなしだったのだろう。
「その時に言ってくれよぉ」
そうつぶやきながらチャックをしっかり閉めるのでした。
(そっと伝えたい)
鶴の恩返しのオマージュ、逃げた後も気になるチャック。みんなは大丈夫かな?
この曲がり角で自分は1度死んだ。
曲がった瞬間に車に轢かれたのだ。
少し立ち止まるとその時の車が目の前を通り過ぎて行った。もう進んでも轢かれる事は無い。
曲がり角から15本目の電柱、ここでも自分は1度死んだ。
電気工事の業者が忘れたレンチが落ちてきて当たったのだ。
レンチが落ちるまで離れて待つ。落ちた。もうこれで安全に進めれる。
こういった未来に起こる事を記憶しながら何度も何度も死んでは生き返り、1日を繰り返している。
未来の記憶はまだ増えるだろう。
最後に死んだ場所を通り過ぎたら次に何が起きるか知らないのだから。
10万でも100万回でも生き返ってやる。
(未来の記憶)
100万回生きた猫のオマージュ、死んで生き返ってを繰り返すのは自分は考えたくないなぁ
「爺さんや爺さんや」
そう声をかけてもどうもココロここに在らずな爺さん。
婆さんはそんな状態の爺さんを見て、まぁ無理もないかと諦めムード。
国を子に任せ隠居してから、子が原因の戦争が始まり、その後国力が衰え敗戦。相手国への賠償で城は売却され、それでも足りないと爺さんが大事にしまっていたガラスの靴まで奪われ、そして今、国の領土も奪われたのだ。
命だけは保証されたが、あのガラスの靴を取られた事で精神的にダメージを負い、今の現状である。
日がな一日、「ワシのガラスの靴をどこへやった、どこへやった。」と繰り返す爺さんを見ている婆さんも徐々に精神をココロを病んでいくのだった。
(ココロ)
シンデレラのオマージュ、本編後の世界線。