天を見上げて星を辿る。
あれが、あの星座だから、あっちの方に…あぁあったあった。
北極星を探し当て、方角はわかった。
星が見えなくならないように進んで行く。
だが、進む先には深い深い森が広がっている。
迷わず森を抜けれますようにと星に願って森へと入る。
もし迷っても戻れるように道標になりそうな物を所々に落としながら歩く。
森を抜ける頃には朝になっているかもしれない。
(星に願って)
ヘンゼルとグレーテルのオマージュ、北極星を見つけに外に出てみようか。
「君が僕の背中の背負子に載せた物、何かカチカチ音がしてない?」
「少しくらい鳴ってるかもね」
「君の背中の物は鳴ってないの?」
「時々同じようにカチカチ鳴ってるよ」
2人が運んでいる背負った物は厳重に梱包された箱で、中身は2人とも知りません。
そのうち、湖の畔へ辿り着いた2人は指示されていた舟へ乗り込み漕ぎ出します。
「君が先に進んでくれくれない?僕は漕ぐのが下手なんだ」
「わかった。先に行くよ」
上手に漕いで行く相方を必死に漕いで追いかける。
徐々に離れていく君の背中は振り返ること無く見えなくなって行った。
(君の背中)
カチカチ山のオマージュ、いったい何をどこに運んでいたのだろうか?
2発の銃声は森へ、山へ遠く響き渡った。
何があったのかと言うと、森で熊に出会ってしまったからである。
本当はオオカミが出たとの知らせを受け追い払うために山に入ったのだが、運が悪かったのだろう。
熊はこちらを認識すると立ち上がり威嚇をしてきた。
自分はゆっくり後ろに下がりながら背中に背負っていたショットガンを手に取る。
ゆっくりと弾を装填しつつ木の影に身を隠しつつも熊から目線は逸らさない。
熊は苛立っていたのか腹が減っていたのか、追いかけて来るように動き出した。
今装填されている弾は散弾だ。足止めにはなるが怪我をさせるだけで仕留めらない上に一層凶暴化させてしまう。
2発目に確実に仕留める事が出来るスラッグ弾を入れておく。
熊が枝に引っかかったのか一瞬の隙が出来た。
その瞬間、照準を合わせ引き金を絞るように引く。
1発目で熊は驚いた様に顔を上げ、だがこちらに向かって走り出した。
2発目、熊の鼻先からめり込むように当たった弾の威力は相当なモノで熊は仰け反って倒れた。
その銃声が森へ、山へと遠く響き渡ったのだ。
この大きな熊を放置するとオオカミが寄ってきてしまうかもしれない。山から出す必要がある。
熊を運ぶにはあまりにも遠い距離だ。
(遠く…)
森のくまさんの熊が運悪く猟師に出会ってしまったバージョンの猟師目線。
「今日もパンを届けに来たよ!」と赤い頭巾の女の子が勢い良く家に入ってきた。
「昨日のカゴと入れ替えておくね。それじゃぁまたねおばあちゃん!」と、それだけ言い残し走り去っていく。
いつも襲うタイミングがない。
ベッドからコソコソと起きてパンを手に取る。
カゴの中に一緒に入っているジャムとヤギのミルクを添えてモソモソとパンを食べる。
もう3年程この生活が続いている。
この家にはあの赤い頭巾の女の子しか来たことはない。なのに気付かれない。
誰も知らない、知りようがない秘密。
どうせ明日もあの赤い頭巾の女の子はやってくるのだろう。
(誰も知らない秘密)
赤ずきんちゃんのオマージュ、気付かれず生き長らえている狼。
ハッとして起き上がる。
背中が痛いのは周りを見ればすぐ分かる事だった。
なぜ俺は野外で地面に寝ているんだ?
ここはどこだろう?山の中のようだが、どの山なのかは一切分からない。
立ち上がろうとして、手に持った物に気付く。
トランプのカードが5枚。
そういえばトランプゲームをさせられる夢を見ていたなと思い、ただその手に握ったトランプは一体どこからだ?と疑問が増える。
全てがハートのキングの5枚のトランプを地面に置き、標高が高いであろう方向に向かって歩き出す。
木の枝の間から見える白ぼけた空と自分が歩く音だけが響く静かな夜明けだった。
(静かな夜明け)
昨日の投稿の続きネタ、どうやらトランプゲームで勝てたようです。