私はガラスの靴で繋がったわね。
アタシは長い長い髪の毛かなぁ。
わたしは氷の魔法かしら。
ワタシは、うーん、あっ、1輪の花ね。
あたし、心と心で繋がるアイテムってないかも。
えー!!とみんなが驚く。
だってあたしの場合、毒リンゴと知らないうちにされたキスよ。いきなり過ぎてなんだかわからなかったもの。
あー、とみんなが今度は納得のため息をつく。
アイテムがなくても繋がってるならいいじゃないのって誰かが声を上げた。
うんそうね、そうだわ。とまたお姫様達のお喋り大会は続くのでした。
(心と心)
色んなお姫様達の集会、男性側と繋がるきっかけの話題が出ていたもよう。
本当は大興奮で呼吸が止まりそうなんだけど、それを隠して抑えて何でもないフリをする。
遠くに見える男性にまだ届かない好意を抱き見つめる。
男性がコッチを見た気がする。
何でもないフリ何でもないフリと心で唱えその本当に見られているかも分からない視線から逃げるように陰に隠れる。
翌日になっても翌々日になっても思い出せばあの男性の姿に興奮を覚え、また何でもないフリをする。
やがてどうしても抑えきれなくなった興奮に負け、自身の声と引き換えに地上に出る為の身体を得た。
もう何でもないフリなんてしていられない。
早くあの男性に会いたい。
興奮の勢いはもう隠さずに地上を目指した。
(何でもないフリ)
人魚姫のオマージュ、好きな人を目の前に何でもないフリは出来ないよね。
後ろを着いてくる仲間は徐々に減っている。
残った者は僅か8人しか居ない。
だが今は逃げる他手は無いのだ。
仲間を見捨ててでも。
後ろから追いかけて来るクマはその巨体のままに体当たりで仲間達を吹き飛ばし、更に速度を上げているように見える。
スタミナ勝負なんてできっこない。スピード勝負ももう負けている。
また1人仲間が吹き飛ばされ、宙を舞い自分が走る方向のその先にただの肉塊となって落ちた。
それを飛び越える。
クマはその肉塊を踏み潰しまた他の仲間を吹き飛ばす。
最後の仲間が吹き飛ばされ、その吹き飛んだ肉塊に足を取られ転んでしまった。
クマが目前まで迫る。
腰がぬけて立ち上がれない。
もうダメだと目を瞑り覚悟する。
が、クマの気配、鼻息はすれどなぜか攻撃されない。
恐る恐る目を開ける。
クマの口が目の前に突き出されていた。
その口からチラついて見える歯に見覚えのあるピアスが引っかかっている。
自分の片耳に同じ物が着いているはずだ。
恐怖のあまり思考が働いていないのか、アドレナリンが過剰に放出されていて恐怖を超えているのか、実際のところ分からないが、何故かクマの口に手を伸ばしピアスを取る。
そして無くなっていた方の耳に着け直す。
クマはそれを見届けるとフンッと鼻息を荒く上げ、仲間達の残骸の散らばった道へ戻って行った。
(仲間)
森のクマさんのオマージュ、仲間が減っていく恐怖の理由が落としたピアスってトラウマすぎるか。
森の中で迷ってしまった兄妹は、手を繋いで寄り添って森を歩き回り、森の中でお菓子の家を見つけました。
兄さんお菓子で出来た家だよ!!
あ〜、甘い物苦手なんだよなぁ
えっ、そうだっけ?
それにさ、直接地面に置かれてるんだぜ?そのお菓子の家
確かに…
お前潔癖症じゃん?外に落ちてるお菓子食うことになんだぜ?
うわ、お菓子に釣られてたけど考えたらそうじゃん!ばっちぃ
もうここにいてもしょうがないから行くよ
そうして去っていく手を繋いで寄り添い歩き去る兄妹を見た魔女は、ぇえ〜と困惑しつつお菓子の家を作ったせいで赤字になった生活費に頭を悩ませるのでしたとさ
(手を繋いで)
お菓子の家のオマージュ、建築法、耐震基準はクリアした上で建っているお菓子の家だけど衛生面は無理でした。
まぁまぁとんでもない要求を課したものだと自分でもしみじみ思う。
5つの宝、人間にはその存在を認識できない物。
認識できないと知りながらあえて探してくるように要求した私は多分…ここから逃げたかったのだろう。
今まで良くしてくれた爺婆には悪いと思っているけど、こうしなければいけない理由もあったの。
私が月に戻る意思を示さなければ、月の使者達は力ずくで私を連れ戻そうとするでしょう。例え周りの被害がどうなろうとも。断固として拒否をしたら、月ごとこの地にぶつけてでも。地球を破壊してでも。
だから私は月に帰る選択を選ばざるを得なかったの。
5人の使者達も、帝も、爺婆も、今までありがとう、ごめんね。
この地の事は忘れず、月から見守り続けるわ。
(ありがとう、ごめんね)
かぐや姫のオマージュ、月へ帰る理由。