足り過ぎた贅肉

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後ろを着いてくる仲間は徐々に減っている。
残った者は僅か8人しか居ない。
だが今は逃げる他手は無いのだ。
仲間を見捨ててでも。
後ろから追いかけて来るクマはその巨体のままに体当たりで仲間達を吹き飛ばし、更に速度を上げているように見える。
スタミナ勝負なんてできっこない。スピード勝負ももう負けている。
また1人仲間が吹き飛ばされ、宙を舞い自分が走る方向のその先にただの肉塊となって落ちた。
それを飛び越える。
クマはその肉塊を踏み潰しまた他の仲間を吹き飛ばす。

最後の仲間が吹き飛ばされ、その吹き飛んだ肉塊に足を取られ転んでしまった。
クマが目前まで迫る。
腰がぬけて立ち上がれない。
もうダメだと目を瞑り覚悟する。

が、クマの気配、鼻息はすれどなぜか攻撃されない。
恐る恐る目を開ける。
クマの口が目の前に突き出されていた。
その口からチラついて見える歯に見覚えのあるピアスが引っかかっている。
自分の片耳に同じ物が着いているはずだ。

恐怖のあまり思考が働いていないのか、アドレナリンが過剰に放出されていて恐怖を超えているのか、実際のところ分からないが、何故かクマの口に手を伸ばしピアスを取る。
そして無くなっていた方の耳に着け直す。

クマはそれを見届けるとフンッと鼻息を荒く上げ、仲間達の残骸の散らばった道へ戻って行った。
(仲間)

森のクマさんのオマージュ、仲間が減っていく恐怖の理由が落としたピアスってトラウマすぎるか。

12/10/2024, 12:51:20 PM