手紙の行方
卒業して働きながら資格を取って何年も働いていた。その後、彼と同棲して暮らしていたから淋しくはなかった。
田舎には再婚した義理の父の家で暮らす母が居た。
自分の家は無いもの、母親ももう他人、そんな気がして何年も帰らなかった。
時々手紙が来た。
母親からさみしいと。
私はあまり人の感情がわからない。
さらっと読んでどっかにほおったまま、本気で考えることはなかった。
今、あの時の母親の年を超えてしまったけど、生きる途中の淋しさ悲しさをわかってあげられていたら…
自分の淋しさは誰にもわかってもらえないと思っていたから、人の事もわかるはずがないと、親の気持ちもわかろうとしなかった。
あの手紙は何処へいっただろうか?
時間よ止まれ
時間よ止まれ❢って思うのはどんなとき?
それは幸せな一瞬?
これから来るであろう恐ろしい時の一瞬の間?
多くは幸せな日々の中でこのまま時間が止まってくれたら…なんて思う時なのかな?
てことは、これから幸せではない事もあるかもしれないと予測してしまうから?
過ぎてからわかる…事もある。
あの日々が幸せだったな〜とか。
いやいや、今だってある。
あ〜この瞬間が幸せなんだよね〜みたいな?
この1杯が幸せなんだよね〜とか?!
幸せって結構身近で単純で沢山あって結局、気の持ちようで。
彼と見つめ合って肌が触れて心が通じた瞬間を感じて身も心も熱くなった時、時間が止まって永遠に二人の世界だけ、なんてありえないけど、そう思う時は生きていて何度もないから。
この瞬間の喜びで一生、生きていけると思えるから。
人は長い孤独の時の中で一瞬、眩しい時に出会う事がある。その光は過去も未来も輝きを失わず時が止まったまま、心の奥で生き続けている。
あの日、きっとこれが人生のどん底なんだと思った。でも、その後も何度もどん底はやってきた。どん底の下にもまだ続きがある事を思い知らされた。時間が止まっても地獄の中で生きていくのは辛い事。早く時間が過ぎて1年10年…とにかく此処から時間も場所も人間関係も飛び越えてしまいたいと願っていた。
そしてわかったのは、それらを叶えるのは自分だけだという事。
這いつくばってもボロボロでも歩いて動いて進んでいれば、必ず違う場所に進むのだ。出口の無いトンネルは無い。ネジを巻いて時計を動かして全て止めてはだめ。例え止めたつもりでも確実に月日は流れ昨日とは違う自分がいる。1本白髪が生まれたり…。
楽しもう、独りでも平気!
自分だけの時間を…生きているのだから。人は関係ないし、人と比べるバカな自分はもう居ない。私は、私だけが知っている私すら居なくなればこの自分は自然の一部、庭の花と同じ。誰にも気づかれないけど精一杯命の限り咲いて散るだけ。
一瞬の永遠に私は生きる。
ありがとう
若い頃は、何故生きているのか?
何度も考えてわからなかった。
今ならわかる。私には使命がある。
だから生かされて今日に至るのだ。
全て奇跡に思える。
私が生まれたこと。彼と出会った事。子供を授かり無事生まれたこと
ご飯が食べられる事。
暖かい家に暮らせる事。
水に困らない事。
太陽がまぶしく感じる事。
思いっきり深呼吸が出来る事。
自分の足で歩ける事。
困った人を助けられる事。
助ける事が困難なら寄り添う事は出来る事。
いつもどこか見守られている事。
右に行っても左に行っても立ち止まっても、とにかくなんとかなると思える事。
誰に向けて言うのではなく、この世の全ての生きとし生けるもの、存在の有無に関わらず、見えずとも感じるあらゆるものに私は声に出して言う。
ありがとう。
ちょっときれい事すぎたかな?
そっと伝えたい
中学生の時とても好きな人がいた。
小学5年生の時からずっと片思い。
映画が好きな私はアラン・ドロンも大好きで…、大げさかもしれないけど、雰囲気が似てた。
あれから幾年月…
彼の消息を聞く。
悲しい事ばかり耳に入る。
タイムマシーンがあるならあの頃に戻ってそっと伝えたい。
私の気持ちを熱い思いを伝えられれば、彼の心には少しだけ希望が残るんじゃないだろうか?
未来の記憶
私の料理は独学のようでいて実は舌の記憶を頼りに過去の味の再現なのだ。それでもあの味には遠く及ばない。水か?塩の量か?何か特別な調味料か?
もう聞くすべは無い。
結局味の素、パッパッパッが決めてだったりして。
子供達があれ、あれ…ん~名前分かんないけどあれ食べたいと言ってくる。名前がないけど代々作り続けて来た美味しいあれ。
子供達の子供達もそれを食べて将来同じ事を言うのだ。
『あれ食べたい』と…。
天国に行ったら真っ先に教えを乞う
あれは何入れるの?って。