愛斗🔞不純物

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6/18/2023, 7:43:01 PM

【落下】

オレはマグカップから手を離し
ガシャンと落として割った。


親の誕生日プレゼントに買った
猫の親子が描かれているマグカップを渡した。
「 誕生日おめでとう」
親はそのマグカップを喜んでくれた。

そして、それから何年経っただろうか…

親は歳をとり、『認知症』になり始めた。

現在、オレは21歳になり
就活を頑張って企業を転々としているが
なかなかうまくいかない。

そのせいかオレは家に居ることが多くなった。

3人暮しだが年金暮しで
オレは失業、叔父は安給料なので
親から笑顔が消え、ネガティブ思考になり
オレに強く当たるようになった。

どんなに優しく声をかけても
親は怒りだすのだ。

そして散々怒り狂う末には
何かと『出てけ』と言うようになった。

オレはそんな言葉を無視して過ごしていた。

ある日、
オレが「また新しい職場の面接の申し込みをした」と
コーヒーの入っていたマグカップを手に持ちながら
上機嫌で親に伝えると

「どうせこっちで働いても無駄だから
早く出ていって養ってくれる誰かのところに行きな」

なんと 応援の言葉ではなく
親のクチからはマイナスな言葉が出たのだ。

オレはただ「頑張ってね」や「期待してるよ」等の
応援の言葉が欲しかっただけなのに…

なのにどうして…?
いつからオレは親から見放されていた?

なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ…?

それと親はこんなことも言い始めた。

「恋人と結婚しても
どうせあんたはポイッと捨てられるよ
『やっぱり要らない』ってさ
だからって子供連れでこちらに帰ってこないでね」

オレのやりたいこと、オレの夢のこと…
全部否定された。

その言葉に怒りと悲しみが込み上げてきて
耐えられなくなり、

オレはマグカップから手を離し
ガシャンと落として割った。

不吉にもそのマグカップは
親の誕生日に買ったマグカップだった。

その時も親は「大丈夫?」の言葉も
こちらへの目もくれず、
ずっと怖い顔でテレビを見つめていた。

そしてそれから親の認知症は更に進んでゆき、
叔父もオレも呆れてあの割れたマグカップの様に
バラバラになりつつになった。

叔父は何も親と話さず仕事に行き、
オレも静かに自室で作業をしている。

一方、親は何もする気がないのか
電気をつけるのを忘れながら
じっとリビングでテレビを見ているだけである。

オレはそろそろ恋人の元へと向かうが
そのうち、親と叔父は『家庭崩壊』しそうだ。

6/17/2023, 5:22:38 PM

【未来】

「これで 晴れてあなた達は『夫婦』です。
おめでとうございます。」


『婚姻届け』を出したオレ達…

いや、『婚姻届けみたいなもの』を出したオレ達

あれは5年前だ。

オレ達はインターネットで知り合った。

2年前
10/26に交際を始め
11/12に初めてリアルで会い
12/24のクリスマスイヴに
雪のなかでプロポーズをされた。

そして『結婚前提』に交際し、
去年は毎月デートをし、思い出を作った。

たまに「子供が居たら」なんて
「もしも」の話をしたりする。

女の子だったら『なのは』
男の子だったら『つかさ』

だが、そんな憧れを持っていても
オレ達は子供が出来ないのだ。

なぜならオレ達は
『男同士』だからだ。

好きな人と一緒になれるのは嬉しい。

だが 周りは冷たい目でオレ達を見る。

周りの目が気になって
人前で手を繋いだり、
「恋人」と言うのが苦手だった。

そんなオレの気持ちを
彼は優しく気遣ってくれた。

「結婚したら同棲しよう
そうすれば人目気にせずイチャイチャ出来る」

彼はオレとの同棲を考えていた。

「それと 子供は『養子』を迎えようよ
オレ達の実の子供じゃないけど
きっと良い家族になれるはずだよ」

オレは彼の考えに賛成した。

そしてオレ達は
市役所で『婚姻届け』(みたいなもの)を提出し
『夫婦』として生活を始めた。

いつか養子を迎えて
『本当の家族』の様に家庭を築き、
『ママ』と呼ばれる時を待ち望んでいる。

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[おまけ]

オレ「ねえ、結婚したら何やりたい?」
彼「今まで道理だよ」
オレ「何するの?」
彼「好きな事 やるの!
結婚しても2人でやりたいこと
やっていこうよ!」
オレ「するの?」
彼「もちろん子供も含めてね!」

将来が楽しみです。
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6/16/2023, 8:46:13 PM

【1年前】

1年前

ふと思い出してみる

何があったかな

…。

そうだ、
あの時はネットカフェでバイトをしていた時だ。

自宅から自転車で3分

オレはワイシャツに黒いベストとエプロンを身にまとい
仕事をしていた。

オレの仕事は『掃除』『厨房』それだけだった。

日によって役割分担され分かれていた。

『掃除』はお客様が帰った後の片付け。
混んでいる時は時間との勝負で
待たせる訳にはいかなかった。

もちろん
ゴミや返却物が多くあるので大変だ。

多数無用な物の使用、食べ残し…
正直イラだっていたが『お客様は神様』なので
それを『感謝』ととらえ、頭をさげるしかなかった。

『厨房』はお客様の注文が入ったら
すぐ調理に取り掛かり、部屋まで持っていく作業だ。

レタス、パプリカ、ネギ等の野菜の仕入れ、
ほとんどは冷凍食品なので作るには苦労しなかった。

やはりポテトは特に人気でよく注文が入る。
ポテトは直ぐに提供できるので楽なのだ。

他にも以外と人気だったメニューが
カツ丼、うどん、鶏軟骨の唐揚げ、チャーハン。

特にカツ丼はちょっと調理するのが複雑で
苦手であった。

…それで
オレがこの仕事を辞めた理由が
『クビ』だ。

理由は『レジ』を覚えてないからだった。

研修期間に『掃除』『厨房』『レジ』を
覚えなきゃいけないのだが
オレはその『レジ』の仕事をまだ教えて貰えてなかった。

オレはそれが理由で辞めさせられてしまった。

あれから1年経っても店の前を通る度に
扉越しに見えるレジの様子をチラリと見ることがある。

そこに当時 仲の良かったバイトリーダーが
いつもの眩しい笑顔で客と話していても
オレと合わせる顔はなくて

オレは静かにその場所を横切るだけ。