愛斗🔞不純物

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【落下】

オレはマグカップから手を離し
ガシャンと落として割った。


親の誕生日プレゼントに買った
猫の親子が描かれているマグカップを渡した。
「 誕生日おめでとう」
親はそのマグカップを喜んでくれた。

そして、それから何年経っただろうか…

親は歳をとり、『認知症』になり始めた。

現在、オレは21歳になり
就活を頑張って企業を転々としているが
なかなかうまくいかない。

そのせいかオレは家に居ることが多くなった。

3人暮しだが年金暮しで
オレは失業、叔父は安給料なので
親から笑顔が消え、ネガティブ思考になり
オレに強く当たるようになった。

どんなに優しく声をかけても
親は怒りだすのだ。

そして散々怒り狂う末には
何かと『出てけ』と言うようになった。

オレはそんな言葉を無視して過ごしていた。

ある日、
オレが「また新しい職場の面接の申し込みをした」と
コーヒーの入っていたマグカップを手に持ちながら
上機嫌で親に伝えると

「どうせこっちで働いても無駄だから
早く出ていって養ってくれる誰かのところに行きな」

なんと 応援の言葉ではなく
親のクチからはマイナスな言葉が出たのだ。

オレはただ「頑張ってね」や「期待してるよ」等の
応援の言葉が欲しかっただけなのに…

なのにどうして…?
いつからオレは親から見放されていた?

なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ…?

それと親はこんなことも言い始めた。

「恋人と結婚しても
どうせあんたはポイッと捨てられるよ
『やっぱり要らない』ってさ
だからって子供連れでこちらに帰ってこないでね」

オレのやりたいこと、オレの夢のこと…
全部否定された。

その言葉に怒りと悲しみが込み上げてきて
耐えられなくなり、

オレはマグカップから手を離し
ガシャンと落として割った。

不吉にもそのマグカップは
親の誕生日に買ったマグカップだった。

その時も親は「大丈夫?」の言葉も
こちらへの目もくれず、
ずっと怖い顔でテレビを見つめていた。

そしてそれから親の認知症は更に進んでゆき、
叔父もオレも呆れてあの割れたマグカップの様に
バラバラになりつつになった。

叔父は何も親と話さず仕事に行き、
オレも静かに自室で作業をしている。

一方、親は何もする気がないのか
電気をつけるのを忘れながら
じっとリビングでテレビを見ているだけである。

オレはそろそろ恋人の元へと向かうが
そのうち、親と叔父は『家庭崩壊』しそうだ。

6/18/2023, 7:43:01 PM