さよならは言わないで
私は悪い魔女だ。
私には好きな男の子がいた。
その子はとっても泣き虫で、ビビりで、死にたがりだった。
いつも私のことを見ていたのも、いつも私の独り言を聞いていたのも、いつも私の後をつけていたのも全部知っている。
ある日その男の子が泣きそうな顔をして1人学校の庭で空を眺めていたのを見たことがあった。
「泣かないで」
私が言うと、
「そうだよね。ごめんね」
って言って泣くのを我慢してた。
別の日には廃墟アパートの屋上で柵を乗り越えようとしていた。
「さよならは言わないで」
私が言うと、
「そうだよね。ごめんね」
って言って柵を乗り越えるのをやめていた。
ある日、私は死んだ。
自殺だ。
死ぬ瞬間もあの子のことを心配してた。
まだたくさん生きて、大人になって、
そう願っていたけど、
あの子はすぐに私の元へ来た。
自殺だ。
私は彼を苦しめていた。
「泣かないで」
「さよならは言わないで」
そう言ってあの子の感情を抑え込ませていた。
私は悪い魔女だ。
私は自分が死んでも言葉の呪いをかけ続ける
悪い魔女だった。
よかったら「泣かないで」も読んでください
光と闇の狭間で
「ここは光と闇の狭間だよ」
ここはどこだろう。
確か、学校に行く途中車にはねられて⋯
そこからは思い出せないや、
綺麗な青空に、広い花畑。
かまくらのような形をしたものが建っていて、中には鏡のようなものがある。
遠くにはポツンとお茶会に使われそうなガーデニングテーブルと、イスがある。
「おはよう!調子はどう?」
え?誰?
「私はここの案内人!如月すずはだよ!」
案内人ならここがなんなのか知っているかもしれない。
「ここについて知りたいのね!話してあげる」
どうやらここは光と闇の狭間らしい。
そして、私の名前は古宮 雪(こみや ゆき)
かまくらのようなものは夢ドームと言うらしい。
そして、夢ドームの中の鏡は記憶の鏡だといいう。
そして、この世界にはタイムリミットがあるらしい。
タイムリミットは10時間
タイムリミットの10時間以内に契約書を書く必要があるとすずはが言っていた。
気づいたら私の手には「契約書」という紙があって、光と闇と狭間の文字。そしてサインをする欄があった。
どうやら契約書の光と闇と狭間は場所を示すらしい。
狭間はここの事だろうが、光と闇が分からない。
この契約書の光、闇、狭間のなかで自分が居たい場所に丸を付け、サインを書いて紙を破ると契約成立らしい。
突然手にあった契約書を眺め、すずはの話を反芻している間に、すずははどこかへ消えていた。
どうせなら夢ドームへ行ってみようと思い、歩いてみることにした
「ついた、」
夢ドームの外には看板が着いていて
「古宮雪さま?」
ドームの中に入って記憶の鏡を覗いてみると、
私がいた世界の様子がみえる。
私の嫌な記憶が見えてきた。
私は虐められていた。親からも失望をされ、疲れ果ててフラフラ歩いていたところ、気づかずに車にはねられた。
「いやだ!」
これは闇だ。私にとってあの世界は闇だ。
では、光はなんだろう。本能的に光は天国だと思った。
闇に行けば地獄の世界。光に行けば何も分からないところでひとりぼっち。
私は手に持っていた契約書の狭間に丸を付け、サインを書いて紙を破った。
私は光と闇の狭間の案内人になった。
私はたまに記憶の鏡を見に行く。
いつ見てもベットで酸素マスクを付けて横たわっている私と哀れな目で見つめる両親がみえる。
ちりりん
「あ!きたきた」
「ここは光と闇の狭間だよ」
距離
僕には幼なじみの女の子がいる。
いや、正しくは「いた」なのかもしれない。
その子は病気で死んでしまった。
学校帰りに毎日病院に通って、毎日その子と他愛もない会話をした。
その子のお母さんよりもよく通っていた。
その時間が楽しみだった。
だけど、その子は死んでしまった。
僕は1番近くでその子と接していたはずなのに。
その4年後僕は大学生になった。
忙しい毎日だったけど、仲のいい友達もできた。
毎日他愛もない話をして、たまに家で遊んだり。
今1番心の距離が近いのは彼かもしれない。
でも、どんなに忙しくてもあの幼なじみの事は忘れられない。
天国にいるあの子とはどのくらい離れているのだろうか。
泣かないで
僕の好きな子は魔女みたいだ。
ミステリアスで、魅力的で、たまに甘いこと言ってくれて、目が、耳が、足が、その子のことを離さなくて。
いつも目で追いかけていたし、いつも声が聞こえていたし、いつも君の後を追いかけて
まるで呪いだった。
「泣かないで。」
なんて言われたら、泣けるわけがなくて、
「そうだよね。ごめんね」
そう返す。
今はあの頃好きだった魔女はもうこの世界にはいなくって、
あの子の言葉だけ残っている。
「泣いちゃだめなら、どうしたらいいの。」
魔女の呪いの言葉が僕を縛って、泣けなくて。
足が、魔女の後を追いかけて
「いま行くからね」
魔女の呪いは強力だった
冬のはじまり
冬は好きだ。
耳が、頬が冷たい冬の風に触られて
キリキリと冷たくなっていく。
そんな冬が好きだ。