死にかけ
バイト終わり
足が冷たい
右に友人
腰まで浸かった
友人はにこにこと笑っている
自害
肺に入る冷たい空気
耳に入るのは優しい音
自殺
溺死
溺死
溺死
溺死
死因は溺死
海水に反射する月
月、
朧月?
おやすみ
夜の海
うたがじょうずなきみがうたうとぼくもうたいたくなる。
僕はいつまで鳥かごに入ってればいいんだろうか。そう思う反面、外に出ようと布団から起き上がると力の抜ける足。
ゴミだらけの、布団と薬と酒と水しかない鳥かごはあまりにも居心地が良すぎたんだ。
「友情か愛情か選ぶとしたら、お前はどっちを選ぶ」
知り合いの教師がふとそんなことを言った。彼がスケッチブックから顔を上げず、鉛筆を動かし続けるから、空耳か幻聴かと一瞬思ってしまった。
「友情か愛情?」
彼の方をみて聞くと彼は鉛筆で僕を指差し動くなと怒ったみたいな、すこし怖い声を上げた。
「ううん。難しい質問だね。友人か恋人か、どちらかが死ぬと仮定して考えても?」
「ああ」
例えば友人と恋人が同じ崖で自殺を、同時にしようとしているとする。友人の方へ行けば恋人は死に、恋人の方へ行けば友人は死ぬ、どちらも取らなければどちらも死ぬ。
「僕なら友人を選ぶ」
「なぜ?」
「なぜって、友人を助けて、それから、恋人と共に崖から落ちれば良い話じゃないか?」
「それだと友人は罪を背負うことになる」
「ま、それもアリなんじゃない?そうすれば友人は自分のことを一生忘れないだろう?そういう君は、どうなの?」
彼ははんと声をあげ笑った。そして「お前は背負う覚悟あるのか?」と聞く。
「僕の質問にこたえたらどう?」
「俺は____を選ぶ」
僕に背負う覚悟なんてなかったよ、口の中で小さく呟いた。地方にある小さい橋、彼はそこから身を投げた。
彼はあのとき、どちらを選ぶと言っていただろうか、それだけが思い出せなかった。
少なくとも、僕は友人でも恋人でもなかったみたい。
だって崖から自殺なんて考えなかったから。
自分より弱そうな人に声かける。
欲しそうな言葉だけ並べて「僕もそうだよ」なんて言って。
優越感に浸ってる。
僕はまだ大丈夫だなって。
大丈夫なんて人それぞれと上から目線に言う道徳の教科書。
それをみて、思う。この作者も、生徒という弱者にこんなこと言って優越感に浸ってんだろうな。
劣等感が押し寄せて教室で吐いた。
僕はよわくない。