「ねぇ!早くこっちに来て!」
「二人っきりで来たのにさぁ!」
「こんな事滅多に無いんだよ!一緒に遊ぼうよぉ〜」
『はいはい』
「早く早く!太陽は待ってくれないよ!」
そう言って駆けてゆく彼女の姿は
どこか無邪気で
どこか悲しそうだった
『…なんで君は俺のために…』
『俺なんかは君の命に相応しくないのに…!』
「なんか言った~!?聞こえなかったからもっかい言って!」
『何も言ってないよ!』
「わかった!」
海の底へ投げた俺のラブレター
君はそれを受け取ってくれた
君は見ず知らずの俺の為に全てを投げ出した
私は人魚姫に憧れていたんだ!ってね
俺は君の鱗も命も好きなんだ
決して君の歌声だけが好きだったんじゃない
彼女は次日の光を浴びると死んでしまう
ならばいっそ日の届かない海の底へ
君と一緒に…
『海の底』
「ん…雨か…」
黙々と時計の音が響く部屋で本を読んでいたら
外から雨の音がした。
「雨なんて久々だなぁ」
隣の家は洗濯物を出しっぱなしだ。
きっと雨なんて覚えてなかったのだろう。
「段ボール箱の中に洗濯物入ってる…飛んでったのかな」
「いや…小猫?」
こんな閑静な住宅街で猫を飼っている人がいたのか
この段ボール箱はいつからあったのか
「いや 今はそんなことは良い。」
傘を開いて久々に外に出た。
ニャーン
「可哀想に。だれに捨てられたんだい?」
ニャーン
「…」
この小猫に話しかけたからには
見捨てるということは極力したくない。
「私の家に来るかい?」
ニャーン
「それしか言わないんだな。君は。」
私は段ボール箱を抱えて家へ帰る。
明日からは騒がしくなるのだろう。
【子猫】
「痛ったあ!」
「誰だよこんな所に穴掘ったやつ!」
友達に頼まれて自販機にジュースを買いに来たは良いが
落とし穴に落ちてしまった。
「彼奴等めっちゃ頑張ったんだろうな」
しかもクソ深い
「なんだよ…」
ザーザー
「雨まで降って来た!」
「足場が崩れて登れねぇ」
少し時間が経った。
多分彼奴等のことだから助けに来ないだろう。
これでは風邪をひいてしまう。しかもオカンに怒られる。
「う〜む」
『大丈夫ですか!?』
「なんとか大丈夫…って誰だよ!」
『雨これからもっと強くなりますよ!』
『早く外に出た方がいいです!』
『私の手を掴んで!』
久々に他人に優しい言葉をかけてもらった。嬉しい。
そんな事を思っていると雨がやんできた。
『貴方運が良いですね!さっさと外に出ましょう!』
そう言いながら手を差し伸べる彼女。
眩しいと感じたのは
天候のせいか、はたまた…
【一筋の光】
鏡を見る。
私は自分の寝ぼけた顔で目を覚ましている。
なんと滑稽な顔だろう。
鏡の中の自分も眠そうだ。
まじまじと見つめていると
鏡の中の自分が睨んできて吃驚してしまった。
そんな朝だった。
〔鏡の中の自分〕