小さい頃に、誰かに言われたことがある。「下手」その一言がどうしようもなく悔しくて、よくあるゲームのキャラやプロを目指す人からしたらしたうちにも入らないだろうが、努力をした。そうするうちに、「上手だね」と言われるようになった。それが嬉しくて、褒められるためだけに続けた。みんなが見てくれるように、褒めてくれるように。
でも、ふと思った。これじゃただの馬鹿みたいだ。好きだから始めたんじゃなかったのか、褒められるために続けてなんの意味がある。そう思って、止めようとした。なのに、次の日、鉛筆を持って机に向かっている私がいた。あぁ、そうか。私は、好きだったんだ。誰に何を言われようと。好きという気持ちだけは、嘘なんかじゃなかった。馬鹿らしかったって良い。惨めだろうがなんだろうが、私はそれが好きなだけ。それ以上に理由は要らない。だから。
ひとりでいると、すべてがおなじようにみえる。それはあなたが一色しかもっていないから。たくさんのひとといるといろとろどりな世界も一色しかなかったらなんだか味気ない。もしあなたが赤を持っていたとき、わたしが青を持っていたらむらさきができる。白だったら桃色ができるし黄色だったら橙色ができる。ほら、味気ない世界もたった一色増えるだけでかがやいてみえるでしょう。ひとりぼっちのせかいもがふたりぼっちになるだけで色鮮やかなせかいに変わってしまう。
夢は希望に溢れている。しかし、その裏側も計り知れない闇が広がっている。叶うことがないとわかっていてもその夢を望めば夢の中で叶えることができる。その時人は希望で満ち溢れている。しかし、目が覚めれば現実がそこにある。理想とかけ離れた自分。比べれば比べるほど愚かに思い、絶望する。だけどどうか、これだけはわかっていて欲しい。どんな人間も必ず、誰かを憧れ誰かから憧れられる。今がそうじゃなくても、きっと自分の輝ける道を見つけられていないだけ。貴方はきっと自分で思うよりずっと輝いている。だからどうか、この夢が覚める前に。
器楽演奏会、そう言われて私はピンと来なかった。長い間静かに座っているのも得意ではないし、ピアノは弾けるけれど特別好きなわけではない。まぁ行かないわけには行かなくて聴きに行った。
そんな渋々だったわけだけれど、聴いた途端、ぶあっと空気が変わったのを感じた。結局一度もつまらないと思うことなく演奏会は終わった。
…たまには音楽も悪くないかも知れないな。冷たい風を感じながらペダルに足をかけた。
人は、どうしようもない感情に呑み込まれた時、涙を流す。生まれてすぐは自己表現として泣く。大人になると少しずつ強くなっていく。でも、完璧は作れない。堪えきれない怒りもあれば、悲しみもある。歓喜の涙も、後悔の涙だってある。それは、まだ貴方が本当に強くなれていないだけ。でも、そのままで良い。無理して感情を抑えることなんてない。たまには一緒に涙を思いっきり流してみようよ。泣かないだけが、強さじゃないはずだから。