きらめき
今の若者は驚くほど賢い。
知性のきらめきを感じる。
甥っ子が5歳の頃に何かの本で読んだのか「どうすれば青カビからペニシリンが作れるの?」と聞かれたことがある。
僕にそんなことが分かるはずがない。
だが、そうも言えないので「よく分からないから次に会う時までに調べておくね」と伝え、家で猛勉強した。
そして勉強した成果を意気揚々と伝えようとしたところ、その頃にはすでに甥っ子は自分で調べ知っていた。
5歳の頃、僕は青カビやペニシリンについての興味など全く持たなかった。
それどころか小学5年生ぐらいまでは友達とうんこやちんちんの話で盛り上がっていた。
うんこについては後年僕の悩みの種になるのだが、その頃の僕はまだ自分がバスの車内でうんこを漏らすことになるとは知らなかった。
些細なことでも
ヨドバシカメラへの道を甥っ子と進む。
おもちゃ売り場に着くと隣で走りたそうにうずうずしている彼の姿が見える。
おもちゃに向かって一目散に駆けていきたいのを我慢している姿がとても可愛い。
我慢している分ひとつ多く、おもちゃを買ってあげたいと思う。
それを伝えると目を輝かせて飛び跳ねている。
毎月節約した分を甥っ子のおもちゃ代に当てている。
昔に比べたらそんなにたくさんは買えないけれど、彼はとても満足してくれている。
些細なことでも、これが僕の幸せだ。
心の灯火
僕の父は職業柄、早くに腰を壊し寝たきりの状態になった。
両親だけではどうしようもない状態になってしまったので、長男であった僕は実家に戻り日常生活の支えをしている。
親孝行をしたい時に親はいないと言うが、今まで両親がしてくれたことを僕は今返せているのは幸運なことだ。
……そう思うようにしている。
率直に言って、覚悟はしていたが僕の想像よりもはるかに介護というのはしんどいものだったのだ。
お互いが思い合っていても痛みやストレスから衝突してしまう。これが一番辛いことだった。
金銭的に余裕があれば介護施設に入れるという手もあるだろう。
残念ながら父は事業に失敗した友人の借金の保証人になり資産を全て失った。
僕は、弟妹の大学費用捻出のために働き貯蓄がほとんどできなかった。
辛くても僕はくじけない。
僕が成長する過程で出会ったたくさんの人たちと作った思い出が僕の心の灯火になっているからだ。
ずっと燃やし続けていく。
開けないLINE
高校時代に1人の友人がいた。
彼とは好きな音楽が同じで共にギターをやっていたこともあり意気投合するのが早かった。
だが、高校3年生の12月、突然無視されるようになった。
僕が何か彼に悪いことをしたのだろうと真剣に悩んだが原因が分からなかった。
話しかけに行っても無視されるので、メールでの連絡を試みたが、それも無視された。
受験勉強があったので次第に僕も彼との関係を修復しようとすることを諦めた。
それから10年以上が過ぎたある日僕のスマートフォンのLINEアカウントに彼のアカウントが表示された。
そして、メッセージとスタンプが送信されていた。
突然の連絡に僕は戸惑い、不審感を覚え、心が落ち着くまで連絡を見ようとしなかった。
しばらく日を置き連絡を見ようとすると彼のアカウント自体が消えていた。
開けない LINEになってしまった。
彼が関係を修復しようとしていたのか、それ以外の何かを考えていたのか今ではわからない。
不完全な僕
自分の半生を振り返ると、失敗ばかりが脳裏をよぎる。
残念ながら恥ずかしい記憶が多い。
それでも甥っ子が生まれてからの僕の人生はとても輝いている。
不完全な僕を大切に思ってくれていることが伝わるからだ。
きっと僕が甥っ子たちを愛している気持ちが伝わっているのだろう。
まだ小さい甥っ子たちに生きる素晴らしさを教えてもらっている。