Tanzan!te

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8/22/2023, 12:38:36 PM

Episode.4 裏返し


《対義語》という言葉を聞いたことはあるだろうか。
これをオセロで例えてみよう。
表が白なら、裏は黒だ。
つまり白の対義語は黒になる。
裏返す、ただそれだけでいいのだ。
だがしかし裏返した先に、求めるものが必ずしもあるわけではない。


好きの反対は?
そう聞かれると、大半の人は「嫌い」と答えるだろう。
それが間違いだとは思わないが、そうでない時もあるのでは無いだろうか。


例えば、ある所にこんなカップルがいました。


初めはお互い好き同士。
しかし、すれ違いにより2人は別れてしまいました。
1人は別の人と付き合い、もう1人は別れたことを引き摺っていた。

新しい恋人がいる方をA、いない方をBにしよう。

Aは今の恋人に夢中だが、Bの事が嫌いな訳では無い。
恋愛対象として見ることは無いが、興味がある訳でもない。

BはAと別れたことを引き摺っていて、まだAの事が好きだ。
Aに嫌われた方が諦めがつくと考えている。


このことからAにとって
「好き」の対義語は「無関心」

Bにとって
「好き」の対義語は「嫌い」と考えられる。

同じ「好き」でも裏返した先にあるものが違うことがある。


大嫌いを裏返したとて、そこに大好きは隠れてない。
そんな事があったりもする。


それに気付けてないうちは、少し夢を見れていて。
都合のいいように考えることもできる。


期待するのも決めつけるのも自由だ。
それを押し付けなければ。


僕はこんな文章を綴っているが、この文章を裏返した先に何があるのか。
何も無いのか、はたまた真逆の考えを綴った文章が隠れているのか。


考えるのを辞められたら、どんなに楽なのか。


8/21/2023, 11:43:16 AM

Episode3. 鳥のように


《鳥のようになりたい》
そう思ったことはあるだろうか。

私は、今日も逃げる理由を探していた。


ピピピピッ ピピピピッ ピッ

私はいつもこの音で目が覚める。
時刻は午前7時、今日は休日だ。
暑い、暑くて仕方ない。
暑さのせいか頭も上手く働かない。

「鳥はいいなあ、自由で気持ち良さそうだし」

そんな言葉を零しながら、1階へと降りていく。

「はあ、もう起きてきたの?」

母はいつもこうだ。
私が好きじゃないのか、迷惑そうで、冷たくて。
家は母子家庭で兄弟もいない
母には感謝しているが、居場所がないように感じる。

「今日は友達と勉強して、そのまま泊まるから。」

「そう。恥をかかせるような真似はしないでよ。」

「…うん。荷物用意したらすぐ行くから。」

朝ごはんを食べ終え、また2階へ上がり、荷物の準備を始めた。

「行ってきます。」

「……」



「…でさ、私も彼氏欲しいな〜…って、聞いてる?」

「…え、あ、ごめん。聞いてなかった。」

「大丈夫?なんかあったの?」

「ううん、集中切れてただけ!なんでもない!」

その日の夜、私は眠りにつけないでいた。
友達は既に寝ているしすることもない。
私は家のことを思い出した。

「私の居場所って、やっぱり家なのかな…」

そんなことを考えていると、いつの間にか眠っていた。


「お邪魔しました。」

「またねー!気をつけて!」



私はなんだか帰る気が起きず、寄り道をしてみた。
時刻は午後6時頃、空はオレンジがかって来た頃だ。

「あ、カラスだ。」

空を見ればすぐに鳥を探してしまう。
鳥は自由だなんて知らないのに、羨ましく思える。

1人になった時は、いつも何かを難しく考える。


私も自由になりたい。
空は広いから、自分で飛べたら気持ちいいだろうな。
でも人間は人間が1番いいと言う。
一生裕福な鳥と、一生貧相で暴力をくらう人間でも。

「鳥のように、私も空を飛びたい。自由になりたい。」


既に自由であるのに、私はまだ何かを求め続ける。
欲に溢れていて、都合の悪い事は他人に押し付けて。
こんな醜い人間になりたいと言うのか。

鳥が人間になりたいと思っているのか。
そんなこと知りもしないのに。
鳥の世界しか知らなければ、人間になりたいと思うことはないのでは無いか。

《鳥のようになりたい》
だなんて、人間でなければ思えなかったはずだ。

ずっと何かを求めて、求めて、求めて。
目の前が見えなくて。


「暗くなってきた、家に帰らなきゃ…」


目の前の幸せに、いつ気がつけるのだろうか。
ないものねだりだと、気付こうとしているのか。


「ただいま。」

「おかえり。ご飯もうできるから待ってなさい。」

「…うん、ありがとう。」

8/20/2023, 1:10:17 PM

Episode2. さよならを言う前に


___そこで、彼らは突き落とした。
この村に"コレ"を密告する者はいない。
彼らは躊躇わなかった。

彼らでさえ知りもなかった。



こんな話を聞いたことはあるだろうか。

ある森の中に、小さな村がありました。
そこは平和そのものをあらわす村でした。
かつての村長は、こんな掟を残しました。


"極限状態"に陥った場合、村人を排除しなさい


その日から村の空気がガラリと変わりました。
ある家族が、みんなバラバラにされていました。
次の日、隣の村人が丸焦げになっていました。
また次の日、村の子供が消え去っていました。

この村は、崩壊寸前になったのです。



ある日、そんな村に1人の青年がやって来ました。
その青年はこう告げました。

「"極限状態"とは、まさに今であろう。
 苦しくて仕方ないのだろう?可哀想に。
 だが安心したまえ。」


「僕がこの村を変えてやろう。」


村人は僅かな希望を胸に、青年の言葉に耳を傾けた。
青年は、村人を1人ずつ呼び出しこう質問する。

「この村の悪魔は、一体誰だ?」

ある村人は"村長"と。
また、ある村人は"別の村人"と。

青年は、最後の1人には質問を変えた。

「お前は、悪魔か?」

その村人は"悪魔は俺だ"と。

青年と村人は、薄く笑みを浮かべた。


そして、青年から最後の言葉が告げられる。

「これより、お前らを悪魔から解放してやろう。」

村人は、久しぶりの笑みを浮かべた。

ああ、なんて哀れなのだ。
ああ、なんて滑稽なのだ。
ああ、きっと運命なのだ。



数年後、その村は見つけられた。
すでに廃村であり人の気配もない。
そんな村で、何かを書き残された紙が発見された。

その内容とは_____


"極限状態"とは、一体何なのか。

それは、好奇心で溢れた醜く、穢らわしいものである。

僕は悪魔だ。僕は悪魔だ。僕は悪魔だ。

楽しいショーが、始まったのだ。


〇〇〇○年△△月‪✕‬‪✕‬日

??島のとある村で、連続殺人事件が発生していたことが明らかになりました。

捜査官の調べによりますと、何者かによって残されていた書物から、この村には"悪魔"が存在していたと見られるそうです。

また、この村についての詳細はまだ明らかになっておらず、現在も懸命な調査が行われ__________


ピッ



「さよならを言う前に、少し楽しませてもらおうか
              さあ、ショータイムだ。」

8/19/2023, 4:40:38 PM

Episode.1 空模様


窓を開けた。
空を見た。

夏の夕空、少しオレンジがかっている。

カメラを向けた。
シャッターを押した。

どこか儚く、消えてしまいそうな。


私は見た。
あなたも見た。

私にとっての空。
あなたにとっての空。


同じ意味をなさずとも、どこか同じで。



今日はうろこ雲。

あなたは、どう?

明日は、きっと。