Tanzan!te

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Episode3. 鳥のように


《鳥のようになりたい》
そう思ったことはあるだろうか。

私は、今日も逃げる理由を探していた。


ピピピピッ ピピピピッ ピッ

私はいつもこの音で目が覚める。
時刻は午前7時、今日は休日だ。
暑い、暑くて仕方ない。
暑さのせいか頭も上手く働かない。

「鳥はいいなあ、自由で気持ち良さそうだし」

そんな言葉を零しながら、1階へと降りていく。

「はあ、もう起きてきたの?」

母はいつもこうだ。
私が好きじゃないのか、迷惑そうで、冷たくて。
家は母子家庭で兄弟もいない
母には感謝しているが、居場所がないように感じる。

「今日は友達と勉強して、そのまま泊まるから。」

「そう。恥をかかせるような真似はしないでよ。」

「…うん。荷物用意したらすぐ行くから。」

朝ごはんを食べ終え、また2階へ上がり、荷物の準備を始めた。

「行ってきます。」

「……」



「…でさ、私も彼氏欲しいな〜…って、聞いてる?」

「…え、あ、ごめん。聞いてなかった。」

「大丈夫?なんかあったの?」

「ううん、集中切れてただけ!なんでもない!」

その日の夜、私は眠りにつけないでいた。
友達は既に寝ているしすることもない。
私は家のことを思い出した。

「私の居場所って、やっぱり家なのかな…」

そんなことを考えていると、いつの間にか眠っていた。


「お邪魔しました。」

「またねー!気をつけて!」



私はなんだか帰る気が起きず、寄り道をしてみた。
時刻は午後6時頃、空はオレンジがかって来た頃だ。

「あ、カラスだ。」

空を見ればすぐに鳥を探してしまう。
鳥は自由だなんて知らないのに、羨ましく思える。

1人になった時は、いつも何かを難しく考える。


私も自由になりたい。
空は広いから、自分で飛べたら気持ちいいだろうな。
でも人間は人間が1番いいと言う。
一生裕福な鳥と、一生貧相で暴力をくらう人間でも。

「鳥のように、私も空を飛びたい。自由になりたい。」


既に自由であるのに、私はまだ何かを求め続ける。
欲に溢れていて、都合の悪い事は他人に押し付けて。
こんな醜い人間になりたいと言うのか。

鳥が人間になりたいと思っているのか。
そんなこと知りもしないのに。
鳥の世界しか知らなければ、人間になりたいと思うことはないのでは無いか。

《鳥のようになりたい》
だなんて、人間でなければ思えなかったはずだ。

ずっと何かを求めて、求めて、求めて。
目の前が見えなくて。


「暗くなってきた、家に帰らなきゃ…」


目の前の幸せに、いつ気がつけるのだろうか。
ないものねだりだと、気付こうとしているのか。


「ただいま。」

「おかえり。ご飯もうできるから待ってなさい。」

「…うん、ありがとう。」

8/21/2023, 11:43:16 AM