『枯葉』
おちた葉っぱは2度と元の場所へは戻れない。
高い高い所から、冷たくなった地面に落っこちる。
冬支度をする木を見上げて何を思うのだろう。
常緑樹に生まれなかったことを悔やんだりするのだろうか。
朽ちて自然に還るその時まで。
『10年後の私から届いた手紙』
10年前のわたしへ
そんなに思い詰めなくていいよ。
何か問題にぶち当たってたとしても、
すごく悲しくて落ち込むことがあったとしても、
大丈夫だよ。何とかなるから。
あなたの10年後の、わたしが言うんだから。
もう絶対間違いないね。
絶対大丈夫。
あなたは今、あなたの全力を尽くしている。
わたしとあなたは、生きてる時が違うだけで同じわたしであるのだから、尺度もわたし。
つまり、幸せの解釈も同じ。
苦しみの感覚も同じ。努力の加減も同じ。
これってつまりは最大限の保証ってこと。
あなたがうまくできなかった部分は、
未来のわたしが受け継ぐから。
だから余計な心配はしないで。
あなたはあなたらしく生きていいんだよ。
最後に、未来のわたしから一言。
今が最高に、一番幸せです!
あなたの10年後のわたしより
『伝えたい』
あなたの言葉に救われました。
きっと何気ない一言だったのでしょう。
あなたはもう忘れているでしょう。
助けてやろうなんて考えもせずに、何となく気がかりだったから放った言葉だったのでしょう。
真っ直ぐ進むあなたへは、
弱いわたしの言葉は届く前に消えるでしょう。
もしも、伝えるだけの勇気を手に入れたならば。
ずっと閉じ込めた感謝を5文字にまとめて、
あなたに向かって全力でぶつけてみるから。
その時は。
何だこれって言って笑ってね。
『1000年先も』
「次にこの流星が見られるのは200年後なんだよ」
博識な君が、夜空を見上げ教えてくれる。
星に興味なんてない。
それでも、流星は素敵だと思った。
楽しそうな君を見て心が躍った。
ああ、薄寒い。
カイロを持ってくればよかった。
「200年後は、
きっと死んでしまっていると思うけれど」
「生まれ変わって、また一緒に見れたらいいね」
ロマンチックな星月夜の下。
あてられたように君が呟く。
笑顔でこちらを振り向くから、
つられて笑い返した。
出会える確証なんて何一つない。
その時まで世界が存続しているのだろうか。
そんなことすら想像がつかない。
遠い未来のことなんかわからないし、
希望だって見いだせない。
それでも、少しだけ期待してしまう。
だから私は、
『ブランコ』
幼少の頃の記憶はほとんど覚えていないと言うのに、ブランコに乗った時のことは何故かよく覚えている。
楽しそうに漕ぐ友達。
背中を押して、押されて。
びゅんびゅん風を切ってさ。
あれ180度行ってるよなぁ、って。
私は、それをじっと見ているのが好きだった。
「乗りたいの?」って勧められて座ってみるけど、
漕ぎ出す勇気はなかった。
「背中押したげる」って背中を押されるけど、
どうしても足を地面につきたくなる。
なんか、怖い。
2本の鎖が子供の体重なんかに負けて千切れるわけなんてないだろうけど。それでも地面から離れたくない。
原理なんてさっぱりわからないブランコも、うっかり手を離して転げ落ちそうな自分も。信用ならない。
ブランコはすぐに友達に譲って、私にしてくれたお礼に、そっと背中を押した。
大きく大きくブランコを漕ぐ友達は、
やっぱり遠くどこかへ飛んで行ってしまうような気がした。