『ブランコ』
幼少の頃の記憶はほとんど覚えていないと言うのに、ブランコに乗った時のことは何故かよく覚えている。
楽しそうに漕ぐ友達。
背中を押して、押されて。
びゅんびゅん風を切ってさ。
あれ180度行ってるよなぁ、って。
私は、それをじっと見ているのが好きだった。
「乗りたいの?」って勧められて座ってみるけど、
漕ぎ出す勇気はなかった。
「背中押したげる」って背中を押されるけど、
どうしても足を地面につきたくなる。
なんか、怖い。
2本の鎖が子供の体重なんかに負けて千切れるわけなんてないだろうけど。それでも地面から離れたくない。
原理なんてさっぱりわからないブランコも、うっかり手を離して転げ落ちそうな自分も。信用ならない。
ブランコはすぐに友達に譲って、私にしてくれたお礼に、そっと背中を押した。
大きく大きくブランコを漕ぐ友達は、
やっぱり遠くどこかへ飛んで行ってしまうような気がした。
2/1/2024, 11:05:25 AM