神様が舞い降りて、私に言った
「 」
次の日から私の生活は様変わりした。
いつも空っぽで定期的に音を鳴らしていた
お腹は飢餓を訴えなくなった。
寒さで震え凍えることもなくなった。
それだけでは無い。
私の心を人知れず抉った心無い言葉を
投げかけられることすらなくなったのだ。
ある日私は神様に言った。
「本当に本当にありがとうございました」
神様に全ての感謝を伝えた。
そしたら驚くことに
神様は私の言葉に目を丸くした。
それからこう言ったのだ。
「死神を始めてから
こんなに感謝されたのは初めてだ」
「私はいつの間にか死んでいたらしい」
ああ、でもいつか誰かに言われたっけ
「お前はもう死んでいる」って
『もう、いらないから。』
彼女は少し寂しげな顔をしながら、目の前の男に言った。それは目の前の男に言っているようで、自分に言い聞かせているようでもあった……。
わたしがそれを預かったのは、今考えたら偶然ではなかったのかもしれない。
その時のわたしは幽霊研究会、まあいわゆるオカルト部に所属していたのだが、実際は霊感がある訳でもなんでもない。ただ「とりあえず何かしらの部活に入るか」と活動の緩さに惹かれて入った人しかいなかったのだった。
ーーそう、言葉を選ばず言ってしまえば、"それ"は本来の役割を果たせてはいなかったのだ。
その流れが変わったのは、ある新入生が入ってから。メガネをかけていて一見真面目かと思えば、真顔で変わったことを言ったりする子で、最初は距離を置かれていたが、あることをきっかけに部にも馴染んだようだった。
今回はその事件は置いておくが。
とりあえずその子がきっかけなのだ。
ある夜のことだった。いつも通り部活が終わり、珍しくその子とわたしと友達と4人で帰っているときのこと。突然、背筋が寒くなった。
あまりにも驚いて、友達の方へ顔を向けると友達も顔をうっすらと青くしていて、「え、?」と掠れた声を発していた。
やっぱりオカルト部なんてものに入ってるからだろうか、まず最初に浮かんだ言葉は"幽霊"。
でもそんなの普通に考えているわけが無い。でも、もしかしたら……。そんな考えが頭をぐるぐる回って思考を溶かす。どうしよう、同すれば。
……その時のわたしはその場から立ち去ることに必死で周りが見えていなかった。
だから全く気づかなかったんだ。後輩は異常な程顔を引き攣らせて、「またなのか……?」恐怖を浮かべていたことに。
結果から言うとその時は何もおきなかった。幽霊が現れることもなかったし、ラップ音なんて欠けらもならなかった。
けど。
わたしの日常はここから大きく変わってしまった。変化に気づいたのは、翌日の帰り道だった。駅のホームで電車を待っているとき、たまたま前にいた男性がどことなく気になった。
別におかしな格好をしていた訳では無い。よくいるサラリーマンが来ているような平凡なスーツ。
なのに、何故なのか。
無性に彼のことが気になり不審に思われない程度にじっと彼の肩を見つめていた。
そこからが、始まりだった。突然、わたしの視界の中にたくさんのものが写るようになった。それはいわゆる幽霊と呼ばれるもの。
最初に見たのは先程まで話にでてきた、サラリーマン、の肩に乗っかっていたおばあちゃんの幽霊。どうやら孫が心配だったらしい。
ーーたくさんの死者が見えるようになり、同時に恨みつらみの深い怨念なども見えるようになった。
最初は少し楽しかった。今まで知らなかった死後の世界が覗けたみたいでわくわくしてた。でもそれは本当に最初だけ。あとから気づく。
あーしんどいなって。死って突然訪れることばかり。神様からあと何日で死にますよーなんてお便りが来ることは永遠にない。何かの拍子に死んでしまったら、それでおしまいだ。
やり遂げたかったことは、終わらないまま。言いたかったことは、言えないまま。
ーー死者は思い残したことがたっくさんあるんだ。
でも幽霊からそんなお話を聞いても、わたし達がなにか出来る訳でもなくて。泣いて謝ったこともある。『力になれなくてごめんなさい』『あなたの願いを叶えて上げられなくてごめんなさい』
ーーだから、、『後輩くん。霊感返すね』
だって私には活用しきれないんだもの。あなたが今まで通り使ってくれればいいと思うの。
そう言ったのに。後輩くんに凄く変な顔をされてしまった。
そして言われた言葉。
「先輩……
自分が死んだの気づいてないんですか?」
結論。
霊感もやけに周りに不幸を引き寄せる後輩もいらねーな
心と心、か…
授業で書くことになった
作文のお題を見てため息をついた。
素直に言うと何を書けばいいのか、
全くわからない…。
しばらく配られたプリントと
顔を見合わせにらめっこを続けたが、
良い案が出てくる訳でもない
会いたくてたまらない人がいる。
それは家族も知らない、私だけの秘密。
ある雪の日に一度だけ出会った男の子。
なんとなく一緒に遊ぶ流れになって
2人で雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり…
小さい頃の事だからあんまり覚えていない。
けど、一つだけ確かなことがある。
それは彼と遊んだ一時が楽しかったこと。
目の前が真っ白に光って体が浮いた
自分がどうなっているのかわからなかった
ただ地面の感触がしなかったから
あってはならない状況なのだなとは理解した
以外にもこういう時
パニックに陥らないようで
「 死ぬのか。」
それだけを明確に悟った。
脳裏を過ぎったのは家に居るだろう
愛しい猫、きなこだ
きっと自分は死ぬ。
1人にしてごめんね、きなこ