すれ違い
一緒に住んでいるのに
いつもすれ違いばかり
私達が起きる前に仕事に出掛け
寝てから帰宅する
仕事が休みの日は昼過ぎまで
部屋でゆっくりしてうらから
顔を合わせるのは休みの日の
夕方からほんの数時間かな
だからこそ
この時間を大切にしたいと思う
パパと過ごす貴重なひとときを
やわらかな光
窓から室内に広がる光を全身で浴びる。
まるで母に抱かれているかのような温かさだ。
パジャマ姿の僕は、胸ポケットに入っているお守りを握り締めた。
明日もこのやわらかな光を全身に浴びることができるはずだ。太陽の光を浴びることが、こんなに心を落ち着かせるものだとは思わなかった。日常の当たり前が愛おしい。
「それでは、そろそろ行きましょうか?」
女性の優しい声が耳に響く。いよいよだ。
白い服を着た女性が3人と男性が1人。部屋に入ってくる。車椅子を移動させると僕を包んでいた光はなくなり、急に寒く、恐怖で身体が震え始めた。
「大丈夫ですよ。必ず元気になります。私が約束します」
心強い言葉を男性に掛けられた。
ゆっくり立ち上がると身体は宙に浮き、ストレッチャーに乗せられる。窓から差し込む光を見つめながら、大きく深呼吸をし、僕は覚悟を決めた。
手術室に向かう。
鋭い眼差しの奥にある
屈託のない素直な瞳
いつも僕を見てくれていたんだね
ごめん、今まで気付かなくて
別れの日にわかっても遅いよね
もう、そんな鋭い眼差しを向けないで
君の透き通る瞳で、今度は誰かを
見守ってあげて欲しい
鋭い眼差しを向けなくても良い人に
束の間の休息
昼間はあんなに騒いでいた子ども達もスヤスヤと寝息をたてる時間。夕飯の洗い物を終え、夫の明日のお弁当の下ごしらえをして、エプロンをしたままソファーに座る。目を閉じると眠ってしまいそうになるほど、身体は疲れきっていた。
まだ、ベッドで眠れない。夫が帰ってないのだ。
駅に着いたという連絡もない。今日は、日付が変わってしまうだろうか。夫からの連絡があれば、すぐに夕飯とお風呂の支度をする。私がベッドで眠れるのは、その後だ。
まだ、連絡がない。いつもならとっくに帰っている時間なのに。遅くなるなら、遅くなると連絡くらいくれてもいいのに。
まっ、いいか。
今は束の間の休息を楽しもう。
こんなこともあろうかと、今日、駅前のケーキ店で
ショートケーキを1つ買ってきたんだ。
踊りませんか?
いや、いいです。