9/29/2022, 12:52:06 PM
毛布を被って、スタンドライトを点ける。
温かいオレンジ色の光に包まれながら、本を開いた。
家族の生活音も、外から聞こえる車の音も、なにもかもが耳を通り抜けていく。
本の世界に浸れるこの時間が、私の宝物。
至福の時間というやつだ。
大きな地下室も、立派な書斎も、なにもいらない。
使い古された相棒の毛布と、誕生日プレゼントとしてもらったお気に入りのライト。
この時間だけは、なんの変哲もないこの部屋が私だけの秘密基地へと変わる。
「……ふふっ」
目が悪くなろうが知ったことか。
私だけの時間。私だけの部屋。私だけのもの。
これが、たまらなく幸せなのである。
9/28/2022, 10:55:11 AM
「また明日」
そんな言葉を交わしながら別れる彼らを遠目に眺める。
「また明日」
彼はそれを言って、聞いて、誰を思い浮かべるのだろうか。今別れた友達?それとも。
夕方の風が制服のスカートを揺らす。
この風が、彼の元へ私の声も運んでくれたら。
「また明日。……次は、直接言いたいなぁ」
遠ざかっていく彼の背を見つめながら呟いた、別れ際。
9/27/2022, 1:25:02 PM
「」
どんよりした空気。
頭が、体が、重い。スマホを持つ手を額に当て、目を瞑る。冷たい。けど、すぐに熱を持った。
ザザァと屋根を打つ雨。とうとう降り出した。
気分すらも、重い。
ザザァ ザァァ
「」
だから雨は、嫌いだ。
いつの間にか止んだ雨音。眠っていたようだ。知らずに濡れた目元を拭い、枕元に転がっていたスマホを手に取る。
「空、綺麗だよ」
待ち侘びたメッセージ。おぼつかない足で立ち上がり、カーテンを開けた。
―――なんだ、雨も悪くないじゃないか。
「昨日のこと、ごめんね」
「こちらこそ。ごめんなさい」
今は、心まで晴れている。