14.
静寂に包まれた部屋。1秒たりとも動かない時計。
まるで時が止まったかのように何もかもが止まっているように見えた。
このまま私の心臓ごと止めてくれ。
そう何度願っただろうか。
見えない恐怖から逃げ続ける日々、床が深みを帯びた赤色に染まっていく。
あと何度この恐怖に耐えれば全てが終わるのだろうか。
あと何度、見えない「明日」が来れば、全て止まるのだろうか。
13.
何もいらない。
独占欲も、お金も、人柄も、言葉も、何もいらない。
ただ、ただそばにいて欲しかった。
会いたいと言うと飛んできてくれる。
私が眠るまでずっとそばに居てくれる。
たとえ言葉を交わすことがなかろうと。
たとえ触れられなくなろうと。
そばに居てくれるだけで最高に幸せだと思うことができた。
そばに居てくれること以外何も望まない。
なのにあの人は、あの人は。
12.
あの時、あの人は、どんな月を見ていたのだろう。
『I LOVE YOU』を"月が綺麗ですね"
と訳した彼の見た月は、どれほど綺麗だっただろう。
きっと、今私が見ている月よりも、はるかに綺麗で、はるかに美しかったのだろう。
愛する人と見る月は、どれほど綺麗だったのだろう。
11.
神様だけが知っている本当の彼女。
優しく、笑顔で他人に接し、頼まれたことはなんでもやる。
勉強もスポーツもできる。成績もいい。
いわば、天才と言うやつだろうか。
みんなが羨むほど完璧でとても美しい表の顔。
裏では、闇に隠れ人を殺す殺人鬼。
彼女の正義は間違っているのだろうか。
悪い人を、法で裁かれない極悪人を殺す殺人鬼。
美しい笑顔の裏には、闇の中で現す穢れた顔を持っている。
でも、それさえも美しいと思ってしまう。
彼女の裏の顔は神様だけが知っている。
10.
会いたい。会いたい。会いたい。
何度叫んでももう届くことは無い。
好き。大好き。愛してる。
もう二度と聞くこともなくなった。
幸せだったのは束の間。
遠い昔の話だ。