「いつか」なんて無いなら、「さよなら」と素直に言って欲しかった。
転校してきて直ぐに俺含め男子生徒の心を奪った彼女。
俺の住んでいたアパートの202号室の下、102号室に引っ越してきた時は流石に運命を感じた。
それから俺は、他の男子生徒よりも彼女との距離を縮めた。
登校はたまたまを装って彼女と共にしたし、休日はゴミ捨てなどで彼女と会う機会を狙った。
そんな俺だから彼女の引っ越しにも気づけた。
転勤族だったらしく、割と早い別れだった。そんな彼女だから、わざわざ他の生徒にも伝えるつもりも無かったらしい。
だから、告白をした。誰も知らないうちに。
そしたら「またいつか、会いましょう」なんて。
遠回しに断られたなんて分かってる。でも、「いつか」なんて、無いくせに。そう、思ってしまった。
もう、彼女とは会えないんだ。そう思った途端現実味を増した「別れ」
失恋と彼女の残酷な優しさに涙を流した。
星になりたい。だから、今日も星を追いかけている。
教室の隅、メガネの奥から君を見つめる。星のように輝く君を。
なんで君はそんなに輝いているの?私も君みたいになりたいなぁ。
だから君の真似っこをした。初めは君がつけてるキーホルダー。なんだかスクールバックが輝いて見えた。
次は勉強道具に髪飾り。
そこまで真似したら君も気づいてくれた。明るくキレイな笑顔で、それ私も持ってるよ。って。
真似してるんだから当たり前だけど、本当に嬉しかった。だから次は髪型もメイク方法も、体型もあなたに近づくため努力した。顔には針やメスを沢山いれた。
性格だって偽って作った。
もう完璧に星になれた。君には気味悪がられた。でも、私は君になりたかったから、邪魔な星は排除しなきゃ。君を、この学校から。
私は逃げまどう星を鋭く光るものを持って追いかけている。
俺と今を生きてくれたお前へ
元学年1位の俺がさ、急に「旅に出る」なんて言って、お前がどう思うかなんて分かったつもりでいた。
きっと軽蔑して、離れていく。
でも、お前から発せられた言葉は予想外のものだった。「俺も行く」だなんて。泣きそうになりながら。
ビックリしたけど、嬉しくて笑っちゃった。
ずっと言い出すのが怖かった。
俺は、お前が好きだったから。
軽蔑されたらどうしようとか、色々考えてさ。でも自分に嘘ついて生きるのは嫌だった。
だから、お前がそう言ってくれて安心したよ。
家族や友達、他人からの目とか、本当は色々怖かった。
だけどさ、お前はせっかく地道に積み上げてきた
"学年2位"って成果を放り出して俺と一緒に来てくれた。
お前のおかげで過去も、未来も、全部捨ててお前と、今を生きようって思えた。
本当にありがとう。
お前に恋した俺より
皆んな、飛べる羽を持っている。だから、成長するといつの間にか皆んな空にいる。
私には羽がない。飛べない。
幼い頃、私は飛べていた。他の子より全てが優秀だった。
でもある時、私を憎む子が現れた。その子は私に武力、学力で勝てない事を知っていた。だから私に一方的に罵声を浴びせた。
衝撃的だった。力が入らなくなりへたり込んだ。
その時、あの子は無慈悲にも私の羽をもぎ取った。
あぁ、やめて。私は、まだ、飛びたい。
それからだ。あの子からの罵声や、弱くなった私への暴力が始まった。
今はもう関わらなくなったけど、いつまでも忘れられない記憶だ。
あぁ、良いな。皆んなは自由に飛べて。私にも、羽があれば飛べたのにな。
今、羽を持っている者たちよ。
自分の羽を育てろ。他人の羽をもぐな。
優雅に、そして、自由に、飛べ。
これは飛べない私の願いだ。
彼の口癖。___special day.
何かと良く口にした言葉だった。
別に外国人とかハーフとかでも無ければ、帰国子女でも留学生だった訳でも無い。
記念日は勿論。なんでも無い日でもそんな事を言っていた。
最初は不思議に思って、少しだけ嫌だった。でも、彼がずっと言っている間にだんだん面白くなってきて、いつの間にか好きな言葉になっていた。
いつでも笑顔で陽気な彼に、私もつられたんだと思う。
そんな彼は今、消毒の匂いがする部屋で沢山の管に繋がれている。喋れはする。だが、それもどうにか絞り出したような声でだ。
もう、先が長く無い。彼の胸が上下をやめていく。
ねぇ、ねぇ、待ってよ。まだ、一緒にいてよ。1人にしないで。お願い。
必死に彼の手を握る。いつの間にか視界が滲んで白いシーツを濡らす。
すると彼が口を開いた。
_こんなに、愛、してくれる。人が、いた。
今日、まで…ずっと、、special day__
彼の微笑む顔と共に、無機質なピーという音が頭に響いた。