俺と今を生きてくれたお前へ
元学年1位の俺がさ、急に「旅に出る」なんて言って、お前がどう思うかなんて分かったつもりでいた。
きっと軽蔑して、離れていく。
でも、お前から発せられた言葉は予想外のものだった。「俺も行く」だなんて。泣きそうになりながら。
ビックリしたけど、嬉しくて笑っちゃった。
ずっと言い出すのが怖かった。
俺は、お前が好きだったから。
軽蔑されたらどうしようとか、色々考えてさ。でも自分に嘘ついて生きるのは嫌だった。
だから、お前がそう言ってくれて安心したよ。
家族や友達、他人からの目とか、本当は色々怖かった。
だけどさ、お前はせっかく地道に積み上げてきた
"学年2位"って成果を放り出して俺と一緒に来てくれた。
お前のおかげで過去も、未来も、全部捨ててお前と、今を生きようって思えた。
本当にありがとう。
お前に恋した俺より
皆んな、飛べる羽を持っている。だから、成長するといつの間にか皆んな空にいる。
私には羽がない。飛べない。
幼い頃、私は飛べていた。他の子より全てが優秀だった。
でもある時、私を憎む子が現れた。その子は私に武力、学力で勝てない事を知っていた。だから私に一方的に罵声を浴びせた。
衝撃的だった。力が入らなくなりへたり込んだ。
その時、あの子は無慈悲にも私の羽をもぎ取った。
あぁ、やめて。私は、まだ、飛びたい。
それからだ。あの子からの罵声や、弱くなった私への暴力が始まった。
今はもう関わらなくなったけど、いつまでも忘れられない記憶だ。
あぁ、良いな。皆んなは自由に飛べて。私にも、羽があれば飛べたのにな。
今、羽を持っている者たちよ。
自分の羽を育てろ。他人の羽をもぐな。
優雅に、そして、自由に、飛べ。
これは飛べない私の願いだ。
彼の口癖。___special day.
何かと良く口にした言葉だった。
別に外国人とかハーフとかでも無ければ、帰国子女でも留学生だった訳でも無い。
記念日は勿論。なんでも無い日でもそんな事を言っていた。
最初は不思議に思って、少しだけ嫌だった。でも、彼がずっと言っている間にだんだん面白くなってきて、いつの間にか好きな言葉になっていた。
いつでも笑顔で陽気な彼に、私もつられたんだと思う。
そんな彼は今、消毒の匂いがする部屋で沢山の管に繋がれている。喋れはする。だが、それもどうにか絞り出したような声でだ。
もう、先が長く無い。彼の胸が上下をやめていく。
ねぇ、ねぇ、待ってよ。まだ、一緒にいてよ。1人にしないで。お願い。
必死に彼の手を握る。いつの間にか視界が滲んで白いシーツを濡らす。
すると彼が口を開いた。
_こんなに、愛、してくれる。人が、いた。
今日、まで…ずっと、、special day__
彼の微笑む顔と共に、無機質なピーという音が頭に響いた。
体育の途中。こんな暑い日に陸上なんて。
元々体力の無い私はすぐにバテてしまい、木陰で青空を見上げながら休む。
ドアが開いている体育館には私の想い人。今日はバレーボールをしている。あぁ、今日も太陽みたいに眩しいね。思わず目を逸らす。
君はどれだけ眩しいんだろう。君はどれだけの人を虜にするのだろう。君はどうして魅力的なんだろう。
もう、諦めてしまおうか。
泣きそうな気持ちを追い出すべく、ため息を吐くと、後ろから声をかけられた。
そう、私の想い人に。
私を心配する言葉を掛ける君。でも直ぐに体育館に戻って行った。
あぁ、君はまた私の心を掴むんだ。
やめてよ。もう離してよ。苦しいよ。
生暖かく吹く風は木陰を揺らした。
揺れる木陰は、まるで私の心のようだ。
あぁ、逃げたいなぁ。
授業に集中できていない。先生には関係ないはずなのに、これでもかと怒られる。
今日も放課後に呼び出しを食らった。
正直どうでもいい。ボーッとしているのも勿体無いので、今日の小説のネタを考える。
今日は男女の恋愛かなぁ。そこにちょっとホラーを混ぜて。最後は彼女の方が行方不明になって、彼氏が探しに行くとか?それか死ネタでも面白いだろうなぁ。
脳内で自分の考えた物語をアニメのように映像化する。
すると先生の怒鳴るような声が聞こえた。
妄想の世界から一気に現実に引き戻される。
僕の楽しい世界を返してくれよ。僕だけが入れる、真昼の夢。
僕が僕でいれる時間だから、真昼の夢は僕を救う。
これからもきっと、
僕は真昼の夢に浸って生きていく。