NoName

Open App
6/28/2025, 3:43:53 AM

まだ、見ぬ世界へ
さあ、次の冒険の舞台はどこだ!

子供の頃、そんなナレーションの声を受けて新しいステージへ向かう、アニメの主人公たちが羨ましかった。
 みんなで足並みを揃え、大きく一歩を踏み出す力強い姿勢。画面いっぱいに広がる、未知の大陸、澄み渡った空、波をうねらす大海原。
それに圧倒されず、全ての謎に突き進んでいく後ろ姿をに、私もこんな体験をしてみたい。そう、息巻いたものだった。
 ところが、大人になると俄然臆病になってしまうもので、ちゃんばらごっこを楽しんだ、あの頃の威勢はどこにやら。剣を放り投げて、盾を二つ構える小心者になってしまった。
 盾を二つ構えているのだから、もちろん歩みも遅い。腰に負担をかけないよう姿勢を低くし、亀足、すり足、忍び足。他人の目から逃れるために、平身低頭。いざとなれば、盾を背負って甲羅の代わり。――まさしく、亀である。
 ちなみに、私は小さい頃から亀に――ではなくて、蛙に似ていると言われていた。母によく、あの緑色の宇宙人軍曹さんに似ていると言われていたのだ。
 今考えると素直に喜べない発言だが、某軍曹さんは、宇宙の彼方から遥々地球までやって来た。そこで、一人の学生と出会い、居そろうしながら地域に溶け込んでいく。唯一無二の地球人の親友さえ、手に入れた。
 今思い返してみると、さすがは、軍曹さん!である。宇宙を隔てて交流するのは、並大抵なことではない。そして、私はその軍曹さんに似ていたらしい……子供の頃だが。
 今の私には、軍人になる気力もないし、宇宙旅行をする気もない。武器を手に、戦うこともないだろう。
 でも、少なくとも私の手には、いや背には、甲羅がある。無鉄砲で、宇宙に飛び立つほどのやんちゃは鳴りを潜め、代わりに防具を手に入れた。
 防具は自分の身を守るもの。だから、それはそれでいい。だって、誰も傷つけないし、疲れたときには、甲羅の中で身を潜められる。
 それに、亀は意外と、噛む力が強いのだ。ここぞという時の食いつきは、誰にも負けない。岩でも噛んで、生き延びる。亀にはそういう、しぶとさがあるのだ。
 私は、蛙から亀になれて良かったかもしれない。
とろくても、いつかは絶対、新大陸にたどり着ける。

だから今日も安心して、ゆっくり亀足、のろま足。
愛しい甲羅を背負って、自分のペースで歩いて行こう。

10/29/2024, 12:40:49 AM

暗がりの中で、迷ってしまったら
とりあえず、真っ直ぐに進んでみよう
そうすれば、必ずなにかには近付くんだから
暗がりの中で、迷ってしまったら
恐れず、ただ一歩を踏み出したい
だって人は、光に惹かれてしまうものだから

10/28/2024, 6:59:14 AM

紅茶の香りって、不思議だ
べっこうあめを溶かしたような色をしているのに
優しく顔を撫でる匂いは、少し苦そうで芳しい
そんなあなたには、クッキーを添えて甘さを加えよう
落ち葉のような茶色が嫌なら、ミルクを加えて
一足先に雪を見に行こう
苦さに加えて酸っぱさも欲しい
そんな大人なあなたには、レモンを添えよう 
紅茶の香りって、不思議だ
レモンのように酸っぱくもないし
ミルクのようにマイルドでもないのに
クッキーのように甘くもない
なのに、香りだけは何を加えても変わらない

10/24/2024, 1:45:48 PM

行かないで
そう言えた私は、きっと前より素直になった
でも、本当は
あなたの行き着く先に、追いつけるようになりたい
もっともっと、欲を言えば
あなたに追いすがられる程、私が求められたい
行かないで
今は私が言う番だけれど、
きっといつか、あなたに言わせてみせる  
――行かないで、と。




10/23/2024, 1:24:48 PM

果てしなく続く、優しい群青色に恋をした
洗いたてのシーツみたいにシミ一つない雪色じゃなくて
誰もが羨望する、オレンジ色のあなたでもない
泣いた時に、そっと慰撫するように一緒に泣いてくれるあの人でもない
その全てを黙って包み込む、優しい青色の広さに
どこまでも雄大に続く、あなた色の自由に
恋をしたんです

Next