「そして、2人はいつまでも幸せに暮らすのよ。
ーーそう、なるはずだもの」
そうして、
めでたしめでたしで物語は幕を閉じるのだ。
そうでなければ
何のために
私は
『そして、』
/知らないままでいたかった
今も瞼の裏に、チリリと散る火花をみる
赤く染まった空
遠くで響く乾いた銃声
煤と涙で汚れた幼い妹の顔
すがる様に伸ばされた小さな手
迎えにくるまでここを出ては駄目だと、自分たち兄妹を納戸に押し込んだ父母は、その後どうなってしまったのだろうか
あの夜から、随分と月日が経った
日々は過ぎる
まるで何事もなかったかの様に
でも
忘れられないのだ
忘れてなるものか
いまだチリチリと燻る火種が
身体の内で火花を散らしているのだから
薄く目を開ける
バチリ、と音がして。
胸の奥で燻る焔が、またひとつ大きく跳ねた。
『消えない焔』
この箱は開けないままでいい
開かないままがいい
知らなければ知ろうとしなければ
この中にはまだ私が愛した幸せな時間が
詰まっているはずなのだから
『秘密の箱』
/鍵なんか捨ててしまって
朝の風が冷たかったからさと
君が誇らしげに掲げる土鍋に
今年も秋の訪れを知る
『秋風🍂』
/寄せ鍋がいいなとリクエストする夜
「砂時計ねぇ……音するか?」
「ものの例えだよ、たーとーえ」
君ねえ、詩的表現を愛しなさいよ、などとしたり顔で肩を叩かれる。
つい先日の夏休み。
入道雲が空を覆うような、あの圧倒的な夏の青を、「なんか空青くて雲でけぇなー」とのたまったあほ面が頭をよぎる。
お前にだけは、絶対に、言われたくないのである。
「……まあ、音はしないけど“圧”は感じるかな」
では…と、サラサラと音もなく降り積もる時の質量を目で追いながら、感想に感情も乗せてみた。
決して先ほどの言を気にしているわけではない。
多分。うん。
「ほぉん。俺は気がついたらいつも計測終わってるわ、砂時計」
かけてたの思い出す時間もまちまちだから、毎回計ってる時間もランダムなんだよなー、と情けない感想をそのままお出しされた俺の気持ちがわかってもらえるだろうか。
『砂時計の音』
/お前に感受性なぞ皆無だわ
/二度と詩的表現語ってくんじゃねぇぞ