タイムマシーン 1/22 (月).
タイムマシーン、それは時空を旅する魔法の道具。
子供なら…否、誰しも一度は、
「タイムマシーンを使うなら、過去、未来、どちらへ行く?」という議題を、
耳にするだろう。
過去に行ってもどうにもならない。
かといって、未来に行ってしまえばこの先がつまらない。
人の意見などでコロコロ変わる私の頭では、どうも決断は固められない。
過去も未来もどれも魅力的だ。
…人によっては決断も変わるだろう。
思い出したいことがあるだとか、未来の様子を研究したいだとか、
人には人の背景があり、それを否定することはよろしくないと思う。
まあただ、こんなのは軽い議題にすぎず、深く考えて疲れるのは
本当に無駄である。…ただ、タイムマシーンに夢を見るのは悪いことではないだろう。
いつか、タイムマシーンが開発されたら、
私たちはどんな決断を下すのだろうか。
寒さが身に染みて 1/11(木).
「寒いなあぁ〜…」
きんきんに冷えた手のひらを、こしゅこしゅ擦って温める。
それで冷たいのは変わらない。冬はこれだから嫌なのだ。
吐いた息が、ふわふわ、と白く染まって上へ上がる。
こんな寒さなのだ。早く家に帰りたい。
家に帰って、私の想い人である彼に、LINEを送るつもりなのだ。
そうすれば心も暖まる気がした。
「へへ…〇〇くん…」
にやつく頬をぴし、と叩く。
早く家に帰りたい。帰って暖まりに行くのだ。
信号機まで、まるで野原をかける動物の如く走り抜ける。
走れば身体も暖まる気がしたから。
暖まることばかりを考える私に、呆れの感情を抱きつつ、
赤信号になった信号機を睨みながら足を止めた。
そこに、ちらりと信号機の後ろにうつる男女の影。
カップルで帰っているのだろうか。少し羨ましい。
私は彼との妄想を脳裏に日々焼き付けている。
私にはお気に入りの妄想シチュエーションがあるのだ。
お気に入りの妄想を始めようとした時、聞き覚えのある声がした。
「わかったわかった、明日はデートするからさあ。」
「ほんとだよっ!約束ね!!」
それは、信号機の後ろにいた男女カップルの話し声だった。
微笑ましい会話。
しかし私は、どうにも笑えなかった。
その彼は、私の好きな彼だったから。
…今日は最悪の日だ。
心も身体も冷たい。
胸のあたりがちくちくする。
寒さが身に染みて、思わず涙が零れ落ちた。
信号機は、空気も読まず青く光った。
【初投稿】 三日月 1/9.
月に照らされて、あたり一面が銀色に包まれた。
その色と混ざりあった貴方の姿は、女神と表現しても足りないくらい、
美しかった。まるで白昼夢のように、鮮やかで鮮烈に記憶に刻まれる。
貴方の横顔を、ただずっと見つめている。ああ、美しい、美しい。
貴方は、私の方を向くことなく、ただ 前を見ている。
片耳に付けているピアスを、色っぽく揺らして、静かに、静かに月を眺めながら
歩いているのだ。
私は貴方について行った。
歩いていった。2人喋ることなく、まっすぐ歩く。
たまに聞こえる、吐息の音が、なんとも例えがたい愛おしさを抱いた。
足に枝が刺さる、頭に雨がさらさらと落ちる。
それでも私は、声もあげず、帽子も被らず、貴方についていく。
貴方は目的地についたのか、漸く近くのベンチに座り、口を開いた。
「綺麗な三日月だね。」
『…うん』
「また来年も、一緒に見に行こうね」
『…うん……っ』
私は 大粒の涙を零し、はしたなくも鼻水を垂らしながら、
なけなしの笑顔を作って答えた。
気づけば彼女はいなかった。
ただ、ベンチに三日月のピアスが、からりと置いてあるだけだった。