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【初投稿】 三日月 1/9.

月に照らされて、あたり一面が銀色に包まれた。

その色と混ざりあった貴方の姿は、女神と表現しても足りないくらい、
美しかった。まるで白昼夢のように、鮮やかで鮮烈に記憶に刻まれる。
貴方の横顔を、ただずっと見つめている。ああ、美しい、美しい。

貴方は、私の方を向くことなく、ただ 前を見ている。
片耳に付けているピアスを、色っぽく揺らして、静かに、静かに月を眺めながら
歩いているのだ。

私は貴方について行った。
歩いていった。2人喋ることなく、まっすぐ歩く。
たまに聞こえる、吐息の音が、なんとも例えがたい愛おしさを抱いた。

足に枝が刺さる、頭に雨がさらさらと落ちる。
それでも私は、声もあげず、帽子も被らず、貴方についていく。

貴方は目的地についたのか、漸く近くのベンチに座り、口を開いた。

「綺麗な三日月だね。」

『…うん』

「また来年も、一緒に見に行こうね」

『…うん……っ』

私は 大粒の涙を零し、はしたなくも鼻水を垂らしながら、
なけなしの笑顔を作って答えた。

気づけば彼女はいなかった。
ただ、ベンチに三日月のピアスが、からりと置いてあるだけだった。

1/9/2024, 12:55:48 PM