12/22/2024, 12:08:54 PM
あたたかな柚子の色が鮮やかに湯船を彩っている。
いびつな形のまるい柚子が二つ、幼い僕の身体の横を流れて、父の濡れたまっくろな胸毛をなでた。
あのときより狭い湯船と、あのときより大きな身体。
あのときと似た小さな手が、香る柚子を大事そうに握りしめている。
12/21/2024, 11:28:57 AM
大空ってきらいだわ。
見上げたらいつでもそこにいて、いやでもあたしの小ささを教えてくるんだもの。
それで、泣きそうになってうつむいたら、にやにやして、意地悪そうに、あたしの影があたしをわらってるのよ。
でもその影も、大空にくらべたらずっと小さいの。
だからあたしは、あたしなりに前を向けるの。
12/21/2024, 9:47:37 AM
ちりん、ちりん、という音を聴くと、だれかがやさしい嘘をついたんだと思う。だれかがうわさばなしをすると、だれかがくしゃみをするように。
12/18/2024, 5:21:05 PM
冬は一緒に花火がしたい。
花火は夏にするものだけれど。
澄んだ星空の下に弾ける火花を見るのは、きっと気持ちがいい。
寒風はきついが、ぱちぱち言う音が暖かいと思う。
最後には線香花火をして、長いような短いような刹那を目の前の炎に燃やす。水滴のようにあっけなく火が落ちる。
そうして、楽しげな二つのシルエットだけが残る。
北の空に北極星がかがやきながら。
私、冬は一緒に花火がしたい。
12/17/2024, 4:27:35 PM
「とりとめもない話なんだけどさ」
「うん」
「あたし、実はあんたのこと好きなのよね」
「ふーん。で、それが?」
「とりとめもない話って言ったでしょ。オチはない」
「たしかにね」
「うん」
「ところで、俺もおまえのこと嫌いじゃないんだよね」
「それはまたとりとめもない話ね」
「うん」
「うん」