飛べない翼に用はない。
今欲しいのはどこにでも、好きなところへ飛んでいける翼だ。
決して落下するような、脆弱で、お飾りなものではない。
どこにも飛んでいけないなら、最初から授けるな。
平らな背中なら諦めることも出来たのに、存在を主張したそれのせいで、いつも叶わぬ夢ばかり見る。
夢を見たってどうしようもない。だから翼をもいでしまった。
落下するだけの体になれば、底に落ちるだけだから。
底にまで行き着いてしまえば、後は自力で這い上がるだけだから。
なんで?なんで、なんで?
これまでずっと仲良くやってきたじゃん。
友達だったじゃん。
なのになんで今さら、友達じゃないって言うのさ。
確かに俺は人じゃないけど、だからってそれだけの理由で友達を解消するの?
お願いだから、友達を解消したいなんて、言わないでよ。
歩くことが難しいなら君の足の代わりになるから。
目が見えづらくなったなら代わりに何があるか教えてあげる。
ボケて、君が俺のことを分からなくなってしまっても隣にいてあげる。
だから、もっと、永く生きてよ。
これからも、仲良く、他愛もない話でもしようよ。
お願いだから、
ひとりにしないで……。
覚えていようと思った。
これが夢だと気が付いた時、この夢は覚えていたいと思った。
自分と共に戦ってくれるあの子の夢。
自分の為に一緒にいてくれるあの子の夢。
夢の中の自分は、あの子に救われて、
自分もあの子を救いたいと思っていた。
どんなに困難が待ち受けていても、一緒にいれば大丈夫だと、
肩を並べて、時にはお互いの背中を預けて。
戦友ともいえるあの子を、覚えていたかった。
なのに、目が覚めると、あの子がどんな子だったか思い出せずにいた。
救われて、幸せで、共に戦ったことは覚えているのに。
あの子の顔が、思い出せない。
パチパチと、星よりも強烈な街の明かりに目が眩む。
星のような優しさは無く、
太陽のような温かさは無く、
力強いのに何処か素っ気なくて、冷たい明かりが目一杯に広がっている。
通り過ぎる人の顔は青白く、生気を感じさせないようにも見えて、
その中に私も居るのだと思うと、
少しの安心と、どうしようもない寂しさに襲われる。
ここでは私は個の無い誰かで、
私のための居場所はない。
どこにでもいけるし、誰も気にしないけど、
どこにも行く宛がないし、誰も私を見てくれない。
夜の街は無関心で優しいけれど、
それでいて、とても寂しい所だ。
星空を眺めていると、一等きれいな星を見つけた。
自分もあの星のように輝けたらどんなに素敵だろう。
そう思いながらも、何をやっても駄目な自分にため息が出る。
自分から輝くことも、誰かから光を当ててもらうこともない自分なんて、
空を見上げて焦がれることしか、
出来ることなどないのだ。