時計の針は午前2時をさしていた。
やっと終わったな…
明日までの締切をなんとか
終わらせたところだ。
これから寝ても数時間しか
眠れないし…
もうダメな日かな…
街灯に照らされた窓を見て
ハッとする。
そういえば、洗濯物を入れてなかった!
本当に今日はダメな日だ…!
洗濯物を急いで取り込みに行く。
あ……
まっしろな息と共に零れた声。
夜空に星が流れた。
一瞬だったけれどたしかに見えた流れ星。
洗濯物を抱え寒さを忘れて空を見た。
ひとつ、ふたつ…みっつと
流れ星をとらえた。
こんな時間まで頑張らなければ、
洗濯物を取り込み忘れなければ
この流れ星を見ることは
なかったかもしれない。
そう思うときっとこの夜は
__特別な夜
人魚姫は広い海の泡に
なってしまったけれど
きっと愛する王子様を生かして
海の泡になった慈悲深い人魚姫は
海の底でひとりのあなたにも
陽の光を届けてくれるように
微笑んでくれるでしょう
__海の底
だいすきな君とのデートは
何度目だって心がおどる。
だから、ひつじたちを数える
時間なのに、ベッドの上では
ファッションショーが開催中。
悩ましいけどこれで決まり!
君の好きな色…だと思うワンピース。
だいすきな君の前では
世界一カワイイ私でありたいから。
さぁ、ひつじを数えよう。
…とはいえ!遅刻しそうなのは
ちょっと違う!!
ひつじたちもそりゃそうだって
笑ってるかな。
待ち合わせ場所に小走りで向かう。
だいすきな君のもとへ。
「走ったら危ないよ」
君はわたしを見つけるなり優しくそういうけれど、しかたないじゃん、
だってこの気持ちでいっぱいだから
__君に会いたくて
「片思い日記」
と、ピンクの文字で書かれたノート。
それはわたしがおさげとリボンを
丁寧に結ってた年頃。
ひょんなことから
クラスメイトに恋をし、
始まった日記だ。
毎日、毎日、彼のことを想って書いた日記。
今日は、おはようを言って貰えた!
さいこーについてる日!
なんて些細なことでも
大喜びをしていたわたし。
思い返せばとても幸せだったと思う。
しかし、ある日からその日記を
開くことはなくなった。
彼が遠くに引っ越すことになったから。
わたしは日記とともに気持ちを
閉じこめてしまったんだと思う。
だれにも見せることなく。
いつの日か、その日記が開けたなら…
と心のどこかで
ぼんやり日記のつづきの夢を見る。
__閉ざされた日記
黄に染まった葉っぱたちが
枝から空へとつれられて、
舞って踊って地に落ちる。
落ちた葉っぱを集めて、
おイモでも焼こうか。
冬が来るよと教えてくれる。
__木枯らし