8/9/2023, 5:50:20 AM
【蝶よ花よ】
触れてみたいと思った。
艶やかな黒髪に、短い髭が生えて少しざらついている頬に、無骨で太い指先に、色も厚みも薄い唇に。触れてみたいと思った。思ってしまった。
「どうした?峯」
突然の声にハッとする。
おそらく無意識に観察してしまっていたのだろう。こちらを見あげている黒い瞳は少し戸惑いの色を含んでいた。
「珍しいな、峯がぼんやりしてるなんて」
「申し訳ありません」
「謝ることじゃねえよ。それより、一通り片付いたから飯でも食いに行かないか。腹がへって仕方ねえ」
「そうですね」
椅子の背もたれに身を預けて目頭を揉んでいる大吾さんの顔には疲労の色が浮かんでいる。頭の中に記憶してある飲食店のリストから今の大吾さんに合いそうな店をいくつかピックアップして伝える。
「んー。落ち着いた店もいいけどよ・・・今はハンバーガーの気分なんだよな」
「ハンバーガー?」
「ああ。スマイルバーガーが食いてえ気分」
(着地点が見つからないので途中まで。あとで編集する)
8/8/2023, 1:36:56 AM
お題:最初から決まってた
小さな、けれど高価なものが入っているのだろうと分かるような小さな箱を差し出して仙道は言った。
「俺とずっと一緒に居てください」
小箱を受け取り蓋を開けると、そこには指輪がふたつ並んでいた。
「お前、これ・・・」
「藤真さんとずっと一緒に居たいんだ。どんな時も」
頬に温かさを感じる。仙道の手のひらに導かれるように、俺は顔を上げた。
仙道の顔は真剣で、それでいて緊張している様子だ。こんな表情もするんだ、なんてのん気に考えてしまった。
一体どれほど悩んだんだろう。どれだけの勇気が要っただろう。頬に当たっている仙道の手は汗で湿っていて微かに震えている。
返事なんて、そんなの最初から決まっていた。
仙道の手に手を重ねる。
「ああ、一緒に居よう」